私も輸出に挑戦したい--。農水省は今年度、輸出する女性農業者を支援しようと、「輸出伴走支援プログラム」に取り組んだ。同省の「農業女子プロジェクト」の一環で、「農林水産物・食品輸出プロジェクト(GFP)」と連携。日本の農水産物の輸出額が伸びる中、サポート役の「メンター」と協力して需要を捉えようとしている。
ユズなどのかんきつの生産、加工などを行う西地食品(徳島県阿南市)は、同プログラムを利用し輸出先を開拓した。同社は以前から輸出に取り組んできたが、販路を拡大したいと参加。香港向けに、ユズの皮のスライス計60キロの輸出に成功した。現地のレストランやカフェでハンバーガーやかき氷などに使われたという。
同社で営業を担当する大倉千寿さん(58)はプログラム参加を機に農業女子のメンバーとなった。横浜市在住で、「地元から離れていてもできることはある」と同社の社長を務める実妹の吉永真由美さん(56)を支える。オンラインでできる業務や関東近郊の展示会への参加、農業女子への参加などを担う。
今回の輸出について仲間と活動できるうれしさに触れ、大倉さんは「輸出したものがどのように使われたかメンターさんから写真をもらえて、やる気と元気が出た」と振り返った。
輸出に挑戦する農業女子を支えるメンターとして活動するのは大吉農園(鹿児島県指宿市)で専務を務める大吉枝美さん(49)だ。自身も農業女子のメンバーで、2019年からキャベツなどの輸出を開始。経験を生かして、バイヤーとのマッチングやメンバーへの発注、荷造りのアドバイスなどを多岐にわたって参加者を後押しする。
少量の生産量でも他のメンバーの商品と組み合わせることで輸出が可能で、大吉さんは「大きなロットではプレッシャーがある。段ボール箱一箱から輸出できるのは生産者も準備しやすい」と話す。
今回のプログラムを総括する報告会が3日、オンラインで開かれた。農業女子や関係者ら約90人が参加。事務局が全体で約1000万円の売上があったと報告。「農業女子のコーナーを設けたい」という海外の量販店からの声を共有した。
西地食品の大倉さんは参加者を代表して自社の取り組みを発表し、「世界に農業女子の農産物が広がってほしい」と今後の広がりに期待を寄せた。
(菅原裕美)