[高騰打破]牛舎の敷料にコーヒーかす 農研機構などが熊本で実証
おがくずは、バイオマス発電の原料としての木材の使用が増えたことが影響し、敷料として供給される量が品薄になっている。価格も高騰している。搾乳牛一頭当たりにかかる年間の敷料価格は1990年の5000円から、20年は1万2000円まで上昇している。
一方、コーヒー粕は国内では飲料工場から約60万トンが出ているとみられる。九州では佐賀県と熊本県などに飲料工場があり、コーヒー粕を確保しやすい環境が整っている。
コーヒー粕を敷料として利用するには、うまく発酵できるかがポイントになる。発酵させることで、牛舎の衛生環境の改善や乳房炎など病気の予防にもつながる。
実証では、既存の堆肥化技術を生かした。水分を調整し発酵を促すために、佐賀県の食品工場から出る「発酵副生残さ」をコーヒー粕に混ぜた。酸性とアルカリのPH値を整えるために草木(そうもく)灰なども混ぜ、約1・5カ月間、発酵させた。
発酵作業に当たった合志市の堆肥施設・合志バイオXの緒方幸代さんは「コーヒー粕は発酵しずらいと聞いていたが、きちんと配合さえできていれば作業は難しくない」と話す。
この敷料を使用した酪農家の衛藤彰一さん(62)は「水分調整に問題はなく、臭いも落ち着いている」と、使用できる考えを示した。
コーヒ粕や発酵残さを提供する工場についても、残さ物の処理費が削減できるメリットが見込まれる。
農研機構畜産研究部門の中久保亮・上級研究員は「畜産農家、堆肥センター、コーヒー粕を出す工場、いずれもコスト的にメリットがある。全国で普及を図っていきたい」と話した。
同研究は農水省の実証事業で行っている。事業には農研機構など12団体が参加している。