
猛烈な勢いで販売額を伸ばす生産部会がある。茨城県のJAなめがたしおさい甘藷(かんしょ)部会連絡会。2021年度は前年度比6億円増の47億円とし、JAの青果物販売額の45%を占める。
作るのはサツマイモ、というより焼き芋だ。出荷の約7、8割が焼き芋向け。スーパーの店頭で焼いて売る手法を仕掛け、現在は全国約5000店舗で焼かれていると推計する。誰でもおいしく焼けるマニュアルを品種ごとに作り、季節を問わない焼き芋ブームの立役者となった。
「サツマイモだけで生活できる農家が増えた」と会長の高木雅雄さん(60)。市場を通じて契約先のスーパーなどに出荷し、栽培面でも、甘くしっとりとした焼き芋を年中楽しんでもらうための工夫を重ねる。秘訣(ひけつ)は、でんぷんの糖化速度が異なる3品種のリレー出荷だ。
JAが「紅優甘」のブランドで販売する「べにはるか」は、掘り取り直後から甘く9~翌年1月に出荷。糖化が早い「紅まさり」(べにまさり)は1~5月中旬に、熟成して甘味が増す「熟成紅こがね」(ベニアズマ)は5~8月に販売する。貯蔵期間を延ばすキュアリング施設もJAが整備した。
こうした戦略は販売低迷の打開策だった。県内のスーパー、卸売業者と焼き芋機を導入し、店頭での焼き芋販売を始めたのが03年。食味のクレームを受けたことから、県と協力して最適な温度や焼き時間を徹底的に研究したマニュアルを作り、惜しまず公開した。
15年には食品企業などと共同出資でサツマイモのテーマパーク「なめがたファーマーズヴィレッジ」を開業し、17年度には天皇杯を受賞。タイなどへの輸出も21年度は過去最高の1000トンに上り、焼き芋の人気が海外にも広がる。「サツマイモの需要はまだまだ増える」(高木さん)。(川崎勇)

焼き芋が売れればスーパーの売り上げが伸び、スーパーの売り上げが伸びれば芋の販売量も増える。だからスーパーへの情報提供は惜しまない。販売が好調な時ほど、量も品質も安定して出荷する必要がある。部会員には「自動販売機からへこんだ缶が出てきたらどう思うか?」と言って、買う側の立場になって芋を作り、選別するように求めている。
概要
会員数=238人
販売額=47億円(2021年度)
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