[リーダーズファイル]福島・JAふくしま未来伊達地区きゅうり生産部会
夏秋キュウリの販売額、4年連続日本一。福島県のJAふくしま未来伊達地区きゅうり生産部会が出荷量を伸ばす。2021年度の出荷量は7059トン、5年で1000トン超増えた。潤沢な出荷で販売額を伸ばして他産地を抜き、18年からトップに立ち続ける。
夏秋キュウリは7~11月に収穫し、同県など東北地方が主産地。部会は15年の機械選果の導入を契機に急成長した。部会員の手作業だった箱詰めが不要となり、その分、栽培面積や期間が広がる。露地より2カ月長い11月まで収穫できるハウスへの作型転換も進め、出荷増につながった。
「9、10月に安定した出荷量がある産地は重宝する」(東京の青果卸)。東北の露地と関東の抑制の端境期で、市場にキュウリが少ないためだ。実需に合わせた生産体制で価格も堅調に推移する。
部会の急成長を見て、キュウリ農家を目指す新規就農者や、桃や米など他品目を作る農家の参入も増えている。JAが年6回のコースで開く「農業塾」では21年度、未経験者25人がキュウリの栽培技術を学んだ。出荷量を維持するため、部会員も就農者を歓迎。伊達市保原地区でUターン就農した佐藤拓也さん(31)・遥香さん(28)夫妻は「農地の紹介から土壌改良まで先輩農家が助けてくれた」と説明する。
夏秋キュウリは出荷期間が限られ、費用対効果を考慮すると、機械選果を導入するハードルが高い。それでも部会がかじを切ったのは、11年の東京電力福島第1原子力発電所事故後、かつて1キロ300円前後だった平均価格が208円まで落ち込んだためだ。
「量と質を引き上げれば価格は戻る」。部会長の佐藤清和さん(61)は設備投資に消極的だった部会員を説得。JAに要望して機械共選を実現した。
部会は20年度、日本農業賞集団組織の部で優秀賞を受賞。同年度に販売額は過去最高の26・5億円に到達した。佐藤部会長は「日本一の産地であり続け、伊達のブランドを確かなものにしたい」と話す。(金子祥也)
部会長 佐藤清和さん
キュウリの箱詰めは負担が重く、離農する農家もいた。機械共選で高齢でも出荷を続けられるようになったことも、出荷増を支えている。心がけるのは、自分の意見を主張しないこと。部会員の声を聞き、行政やJAなどにそのまま要望を届ける。若手の意見を代弁するリーダーが、時代に求められている。
概要
部会員数=575人(21年度)
販売額=23億円(21年度)
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