
種なし品種が人気の中、産地のブランド力の源は種ありのアレキだ。高度な技術が必要で熟練の25戸だけが4・5ヘクタールで栽培する。深みのある味わいにファンが多く、2021年度の1キロ平均単価は約3600円と、シャインを上回った。
高品質を支えるのは厳しい選果。糖度16以上で、酸抜けの良い果実だけを出荷する。力を入れるのが出荷シーズンに実施する「検見(けんみ)」と呼ぶ、巡回検査だ。会員から選んだ検査員6人が全園地を回り、房形や食味を確かめ、出荷時期を判定する。会長の浅野三門さん(58)は「市場の信用を守るため、一番大事な作業だ」と強調する。
部会は1951年にアレキの栽培を始めた。県内では後発の産地ながら、競争力強化へ早期出荷を目指し、60年に12月から加温する極早期加温栽培の技術を確立。高度な温湿度管理と房管理で6~9月の長期安定出荷を実現し、売り上げと面積を伸ばした。
しかし、景気の影響を受け、2000年代には単価は低迷。会員の高齢化もあり、売り上げが落ち込んだ。1990年代後半に10億円を超えていた売り上げは、4割減少した。産地存続の危機に新規就農者を呼び込み人気のシャインを導入。アレキで培った技術を共有し、高位平準化を推進。産地は若返り、2本柱で売り上げはV字回復した。
今は会員の3割を40代以下が占める。21年に日本農業賞の集団組織の部の大賞を受賞。高品質なブドウを安定供給する産地運営で市場の期待に応える。(鈴木健太郎)

アレキは生理障害が出やすく、枝管理や水の管理など技術が必要でシャインに移行する産地も多い中、定期的に講習会を開き、会員間で技術を伝え合っている。「日本一」ということで、能力と意欲が高い新規就農者が、産地を支えてくれる。極早期加温栽培の技術とブランドを、将来に伝えたい。
概要
部会員数=100戸(22年度)。全体の面積は23・8ヘクタール
販売額=9億6000万円(21年度)
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