しかし、オランダで生産されていた種の販売が2010年に終了してしまったことが課題となっていた。アスパラガスは定期的に株を更新する必要があるが、種がなければできない。町内のアスパラガスの栽培面積は減り、「ラスノーブル」生産は窮地に立たされていた。
そこで着目したのが、苗の細胞を培養し、増殖する技術だ。町とJAは20年に苗の復活プロジェクトを発足。ワサビ苗の培養技術を持つ食品メーカーと連携し、苗を生産することに成功した。

21年からはクラウドファンディングを募り、より安定生産するための技術確立や、農地で実際に栽培する実証を実施。今年5月には実証で植えた苗から初めて収穫できた。現在実証中だが、プロジェクトでは、生産した苗を25年から生産者向けに供給できるよう目指している。
新しい苗を待ち望んでいる生産者からは期待の声が上がる。アスパラガス4ヘクタールを栽培する、白金アスパラガス生産部会部会長の沢尻朋希さん(51)は「さまざまなメディアでも取り上げてもらい、徐々に知名度も上がってきているラスノーブルが今後も消費者に届られるようになってほしい」と話す。
JAは「町内全体でのアスパラガスの生産は減少傾向にあり、ラスノーブルの復活を皮切りに、今後のアスパラガス生産全体の一層の振興につながることを期待している」(販売部青果課)と強調する。
再興に向けたPRも本格化してきた。町やJA、農業関係組織などでつくる協議会は「ラスノーブル」のキャラクターを作成し、今年5月に「ビアラ」と命名。地域内外でのさまざまな宣伝などに活用する予定だ。
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