
全国一の竹林面積を有する鹿児島県。中でも山間部の多いさつま町はタケノコ栽培が盛んだ。徹底した竹林管理のもと、10月から収穫が始まる「早掘りタケノコ」は、首都圏の料亭からの引き合いが強い。
さらに町内にある薩摩中央家畜市場は、子牛の平均取引価格で常に全国上位に位置する。肥育も盛んな屈指の肉用牛産地でもある。
各飲食店が工夫
全国に誇る農畜産物があるのに、名物と呼ばれる料理が少ない──。鹿児島県飲食業組合さつま支部は2012年、地元食材を使った名物料理の模索を始めた。検討の末、13年に誕生したのが「黒毛和牛たけのこ丼」。2種類の食材を使用し丼仕立てにする他に大きな制約はなく、町内の飲食店ではそれぞれの趣向を凝らした丼を提供している。
JA北さつまが運営する直売所「宮之城ちくりん館」に併設するレストラン「とどろ亭」では、老若男女問わず食べやすい牛丼風の味付けで提供。春先は直売所から調達したタケノコ、それ以外の時期も地元産タケノコの水煮を使い、年中提供している。レストランを訪れる地元農家や町内在住者が、丼料理を食べて気に入り、作り方を尋ねて「家でも作ってみよう」と話す人も多いという。
食感生かし調理
肉は黒毛和牛の肩バラ肉「ブリスケ」を使用。適度にさしが入り、加熱しても柔らかな食感が特徴だ。タケノコと、同量のタマネギを使い、甘味を出す。同店の天瀬豊己さん(40)は「タケノコやタマネギは味が染み込みやすいように薄切りにするのがポイント」と説明する。
「とどろ亭」ではアクセントとして、タケノコに小麦粉をまぶして油で揚げ、乾燥させたチップスを添える。「旬の時期になると、この料理を求めて来店する人が増える」と天瀬さんは笑顔で話す。
レシピ
■材料(1人分)
牛肉60グラム、タケノコの水煮30グラム、タマネギ30グラム、ご飯180グラム、だし汁100ミリリットル、しょうゆ大さじ2、砂糖大1、みりん大1、酒大1、水菜、小ネギ、紅しょうが各適量
■作り方
①タケノコとタマネギは薄切り、牛肉は食べやすい大きさに切る。調味料(だし汁、しょうゆ、砂糖、みりん、酒)を混ぜ合わせておく。
②鍋にタケノコ、タマネギ、調味料を入れ中火にかける。
③沸騰したら牛肉を入れ、ふたをせずに火が通るまで煮る。
④炊いたご飯を皿に盛り付け、その上に具材と煮汁を好みでかける。
⑤水菜、小ネギ、紅しょうがを盛り付ける。お好みで温泉卵、たけのこチップスを添える。
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食材ヒストリー タケノコ 竹林管理が品質の鍵

高品質なタケノコ生産には日当たりの確保や適切な施肥といった竹林管理が欠かせない。管理することで、交互に訪れる表年・裏年での出荷量の差を抑えることにもつながる。ただ近年は高齢化で、放置竹林の増加が問題になっている。
JA北さつまは、部会や振興協議会と連携し、タケノコ品評会や竹林の整備技術を競う竹林品評会を開催。産地維持と増産への機運を高めている。