
小麦栽培と共に
生まれも育ちも同地区の木村匡子さん(77)は「子どもの頃、よく母が作ってくれた。当時は小麦粉に、貴重な砂糖を少量加えて、薄く焼き四つ折りにして食べた。おやつと言えば一年中これだった」と話す。片岡リヨ子さん(73)も「生地に甘味があまりないので、季節によってエンドウや小豆のあんを作って巻いて食べるのが最高のおやつだった」と懐かしむ。
同県は、小麦の栽培が盛んで、しきしきの他、三輪そうめんや、行事食の「半夏生餅(はげっしょもち)」など、昔から小麦を使った料理が親しまれてきた。しかし、時がたつにつれ、同地区の小麦の栽培は減っていった。物流も発達し、おやつの種類も増え、しきしきは人々から忘れ去られた。
今から30年前、水稲の転作で小麦の栽培が復活。その後、うどん以外の食べ方として、しきしきがよみがえった。木村さんは「作り方が簡単だったから復活できた」と説明する。小麦粉で作った生地を薄く延ばし焼くだけのため、多くの人が料理名は忘れていても、作り方は覚えていたという。復活に合わせてジャムを塗り巻くアレンジも生まれた。
素朴な味が好評
木村さんらは継承に向けて農業祭などでしきしきを振る舞っている。若者からは素朴な味でおいしいと好評だ。小・中学校の家庭科でも作り方を教えている。生徒からは「すぐに作れるので受験勉強の夜食にぴったり」「簡単で誰でも作れておいしい」などと人気だという。
おいしく作るこつは、中火で焼くこと。木村さんは「中火で焼き、表面がぷつぷつしてきたらひっくり返す。そうするときれいに焼ける」と話す。
レシピ
■材料(4人分)
小麦粉300グラム、砂糖180グラム、塩5グラム、ベーキングパウダー4グラム、水500ミリリットル、卵1個、好みのジャム適量
■作り方
①ボウルにふるいにかけた小麦粉とベーキングパウダー、砂糖を入れる
②溶き卵をこしながら①に加え、塩と水を入れよく混ぜ合わせる
③フライパンを中火で熱し、油(分量外)をひき、②の生地を薄く広げて焼く。表面がぷつぷつとしてきたらひっくり返す
④両面が焼けたら皿に盛り、好みのジャムなどを塗り、くるくると巻く
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