ドローンは農薬の積載量が限られるため、高濃度・少量で効く農薬の散布に向く。通常の農薬は数百倍~数千倍に希釈するが、ドローン向けは数倍~数十倍が多い。こうした高濃度・少量での効果や安全性などを確認した農薬は、使用方法が①無人航空機による散布②無人ヘリコプターによる散布──などの登録を受けている。
一方、こうしたドローン向けの登録がない農薬も、散布できないわけではない。使えるのは、使用方法が「散布」「全面土壌散布」など、特定の散布機器の指定がない農薬だ。希釈倍数や使用量といった使用基準を守ればどんな機器で散布してもよいため、ドローンでも散布できる。
だが作業効率や飛行時間を考えると現実的ではない場合が多い。例えば、あるキャベツ向けの殺虫剤の使用基準は、希釈倍数が1000~2000倍で、使用液量は10アール当たり100~300リットル。これに対し農薬散布用ドローンは積載量8リットル程度、飛行時間10~15分程度の機種が多い。十分な効果を得るには10アールの農地でも数十回飛ばす必要があり、バッテリーを何度も交換しなければならない。
ただ、農水省によると、傾斜地での茶の栽培など、動力噴霧器での散布に労力がかかる場合には利用される例があるという。
では、ドローン向けの登録がない農薬を、ドローン向けのような高濃度でまいたらどうなるのか。使用基準の希釈倍数より高い濃度で使ったり、単位面積当たりの使用量を上回ったりした場合、農薬取締法違反となり、最長3年の懲役や最大100万円の罰金を科される可能性がある。
基準を超える高濃度で散布すると、作物が薬害を起こしたり、残留農薬の基準値を超えたりする恐れもある。薬剤が均一にまけない、ノズルに詰まるといった弊害もある。同省農薬対策室によると、現在までにこうした高濃度の散布による同法違反の報告はないが、「農薬のラベルに書いてある通りに使ってほしい」と求める。
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