火傷病57カ国で発生 侵入迫り産地危機感
火傷病に感染すると枝や葉などが火にあぶられたように枯れ、木が枯死することもある。有効な防除法は未確立で、感染すれば伐採が必要。甚大な農業被害を及ぼし、経済的に重要な植物病原細菌の上位10種に入る。
欧州地中海地域植物防疫機関(EPPO)によると、発生起源とされる米国東部では1900年代には広く確認され、欧州では50~90年代に発生。2000年以降は韓国・中国を含むユーラシア大陸東部やアフリカ北部にも広がった。
感染経路は多くの場合不明だが、輸入した苗木を介して侵入したと推察されるケースがある。日本は植物防疫法で発生国からの苗木や果実、花粉などの輸入を禁止。別途、2国間で検疫条件を合意した米国やニュージーランド産リンゴ果実などは輸入している。
農水省は中国での火傷病発生を7月中旬に確認し、花粉の輸入を8月末に停止。同省の推計では、梨の授粉では面積で3割が中国産花粉に依存しており、来春の授粉に必要な花粉が確保できるのか、不安視する声がある。
産地は強く警戒する。梨産地の千葉県白井市はホームページに「(火傷病が侵入すれば)梨の産地として終わる可能性も十分に考えられ、相当な危機感を持っている」と掲載。花粉の輸入再開の見込みは立っていないとして、「自家採取が大前提だ」と花粉自給を農家に訴える。