発電所などから出る木質バイオマスの燃焼灰を肥料原料に使う動きが広がってきた。2022年の肥料規格の見直しで、燃焼灰の肥料成分が保証できるようになったことを背景に、同年から一部の肥料メーカーが原料に採用した製品を販売。24年1月からは、国内最大級の木質バイオマス発電所からも、肥料メーカーなどへの燃焼灰の販売が本格化する。
木質バイオマスの燃焼灰は産業廃棄物として処分されることが多い。農水省は、国内資源の有効活用へ22年3月、肥料取締法に基づく公定規格「副産肥料」に、木質バイオマスの燃焼灰を追加。都道府県の登録を受ければ、燃焼灰に含まれるカリウムを中心とする肥料成分の最低含有率が保証されるようになった。含有率が分かれば、肥料メーカーが他原料と組み合わせて製品設計しやすくなる。
朝日アグリア(東京都豊島区)は、「AGエコレット24号」を22年10月から販売している。カリ8%などが保証される燃焼灰に、化学肥料、堆肥を混ぜた製品。製品の肥料成分の含有率はカリ6%、窒素12%、リン酸6%。石川県内限定で年間200トン強を販売する。燃焼灰は、同県小松市にある地元産の木質チップを燃料とする発電施設から調達するが、今後、別の発電所からの調達も検討する。
木質バイオマスの燃焼灰は、公定規格見直し前も、肥料成分が保証されない「特殊肥料」として各地で使われてきた。今後も特殊肥料として利用できる。JAえひめ南は、23年から高知県の発電所から出た灰を、かんきつ農家向けに販売。神奈川県藤沢市も、家庭菜園を楽しむ市民らに、発電所の燃焼灰を無料配布している。
同省によると、発電所をはじめ木質バイオマスをエネルギー利用する施設は全国1342カ所(22年)ある。