![※[農政の憲法]](https://www.agrinews.co.jp/media/2024/03/22/l/20240322_gzznqkk5dcc3p9qrxzvz.jpg)
改正案は同日の衆院本会議で、与党などの賛成多数で可決された。食料・生産資材の輸入不安定化や農業人口の急減といった情勢変化を踏まえて見直す。食料安保を巡り、国内生産の増大を基本とし、輸入なども重視する。日本維新の会の提案で、多収品種の導入促進も明記する。
本会議では改正案の採決に先立ち、賛成・反対討論を実施。自民党の小島敏文氏は賛成の立場で、食料安保の確保には安定的な輸入が必要だと強調した。維新の掘井健智氏も、食料安保が盛り込まれたことに「大きな意義がある」と賛成した。
反対討論には3人が立った。立憲民主党の渡辺創氏は、食料自給率の低迷を問題視。共産党の田村貴昭氏は、改正案は輸入依存を強めると訴えた。国民民主党の長友慎治氏は、自給率向上ではなく農業の輸出産業化を目指していると批判した。
改正案は3月26日の衆院本会議で審議入りした。食料の価格形成の在り方などが論点となり、政府は価格転嫁に加えコスト高騰対策などで対応する方針を示した。野党は転嫁が困難だとして所得補償など直接支払いの充実も必要だと主張した。
参院では4月26日にも本会議で審議入りし、大型連休明けの5月に農林水産委員会での質疑が本格化する。
[解説]国民理解深まる議論を
基本法改正案が衆院を通過した。これまでの審議で政府は、食料の価格形成の法制化などで前向きな姿勢を示したが、あいまいな答弁にとどまる場面も目立った。農業関係者を含め国民の理解が深まったとは言い難く、野党の多くも反対に回った。参院では、合意形成も重視した、より丁寧な審議が求められる。
基本法は政策の方向性を定める理念法ではある。とはいえ、価格形成や食料安全保障に関する新たな目標など重要な論点でも、政府は今後具体化するとの答弁に終始した。衆院農林水産委員会の地方視察では、国民の理解が想定以上に広がっていないとの意見も農業関係者から出た。
基本法は農政の憲法とされ、長期間の政策や予算の方向性を定める重要な法律だ。その改正に当たり政府は、国民各層の理解を得る必要がある。政治的な立場の違いを超えて、できる限り幅広く賛同を得られる形での成立を目指すべきだ。