同日の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決、成立した。改正をリードしてきた自民党の森山裕総務会長は、成立後の農林合同会議で「今からがスタートだ」と述べ、施策具体化や予算充実が重要との考えを強調した。
改正法は、食料自給率目標に加え食料安保に関する目標を新たに設定し、達成状況を少なくとも年1回調査、結果を公表すると規定する。食料の価格形成では「持続的な供給に要する合理的な費用」の考慮を求める。
気候変動を踏まえ、農業の環境負荷低減を新たな理念に掲げる。生産性や付加価値の向上による農業の持続的な発展や地域社会の維持に向けた農村振興も理念として打ち出す。

改正案の審議では、食料の価格形成が焦点に浮上した。政府は価格転嫁と収入保険などで対応すると説明。野党は直接支払いの充実も必要だと主張した。議論は平行線をたどり、日本維新の会を除く野党は改正案に反対した。本会議で立憲民主党の羽田次郎氏は「再生産可能な価格が実現するかは不明」だと訴えた。
改正法の成立を受けて政府は近く、岸田文雄首相を本部長とする食料安定供給・農林水産業基盤強化本部を開催。来春の次期食料・農業・農村基本計画の策定に向けて、施策の具体化を進める。
改正案の審議では価格形成に関心が集中した。だが、政府は、関係者が集う協議会で検討を進めるとの答弁に終始。自給率以外の新たな目標も、詳細は基本計画で詰めるとの説明にとどめた。今後は、これらを巡る議論が待ったなしとなる。
自民党は価格形成について、次期通常国会での法案提出を要望。畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)の見直しも求める。食料安保に関する目標も、基本計画の策定過程で急ぎ詰める必要がある。
来月決定の骨太方針を皮切りに本格化する来年度予算編成では、施策推進に必要な財源を確保できるかが焦点。岸田首相は前向きな姿勢を示したが、財政支出抑制の圧力もある。
生産者はコスト高騰に苦しむ。四半世紀ぶりの農政転換の成否は、充実した施策と予算を実現し、前向きな流れをつくれるかどうかで決まる。