[論説]改正基本法の成立 実効性ある政策結実を
改正基本法は、29日の参院本会議で与党と日本維新の会などの賛成多数で可決。立憲民主党をはじめ野党の多くが反対した。国民の食を支える農政の基本理念を定める法律で、党派の対立を超えられなかったのは残念だ。国民理解がなければ政策は進められない。まずは、改正内容を広く周知する必要がある。
1999年の基本法制定から四半世紀。唯一の目標に掲げた食料自給率は制定当時の40%から38%に低下。45%に設定した目標値は一度も達成されず、その検証も不十分だと指摘された。
改正基本法は、国内外の食料を巡るリスクの高まりを踏まえ、「食料安全保障の確保」を基本理念に掲げた。政府は今後改定する基本計画で、食料自給率を含め、食料安全保障に関する複数の目標を定める。これまでの反省を生かし、今度こそ目標を達成するための農政の枠組みを再構築しなければならない。
基本法制定以降も、農業者と農地面積は減り続け、実質の農業産出額も下がり続けた。岸田文雄首相は国会答弁で、農業生産基盤の弱体化に危機感を示したが、新たな基本計画では生産基盤の維持・強化に向けた道筋をしっかりと付けたい。
農政の推進には、安定した予算の裏付けが欠かせない。2024年度の政府農林水産関係当初予算は2兆2686億円と、99年度の3分の2に減少した。近年は緊急的な財政支出のために行う補正予算で主要施策の財源を賄う、いびつな編成が続く。既存予算の付け替えではなく、食料安全保障に必要な予算をしっかりと確保すべきだ。
改正基本法は、食料の価格形成を巡り「持続的な供給に要する合理的な費用」が考慮されなければならないと定めた。長く続いたデフレによる安値は消費者に恩恵をもたらす一方、生産者や食品業者を苦しめ続けた。こうした食料価格を巡る根本的な課題に向き合ったことは評価したい。
問題はそれをどう実現するかだ。岸田首相は、適正な価格形成の仕組みづくりへ「法制化を視野に検討する」と表明、「(農業者が)再生産可能となるような価格形成がしっかりと行われるよう後押ししていきたい」とも述べた。
資材価格や人件費上昇が続く中、農家が希望を持てる価格形成の仕組みづくりと、経営安定対策の充実が急務だ。