自らくわを振って、田起こしを済ませたサクナヒメ。母が遺した「農書」を頼りに、稲作を知る仲間「田右衛門」の力も借りて苗を用意しました。
代かきも終えて、水を行き渡たらせた田に足を踏み入れると、サクナヒメは「柔らかいのう…。そして、ほのかにぬくもりを感じる」とうれしそうに話します。
苗を手にしたサクナヒメに、田右衛門は「おおよそ指の節二つ分くらいの位置まで土の中に指する」と農書を読んで伝えます。サクナヒメはその通りに苗を植えますが、苗はぐらっと傾き、倒れそうになります。
その様子を見た田右衛門は、再び農書を引用して「代かきが終わった後の柔らかい土では、倒れてくることもある」と説明。「軽く手前に引きて、土に引っかけるようにすると良し」と伝えます。
農書の教えに沿って、再びサクナヒメが苗を植えると、今度は傾くことなく、まっすぐにぴんと立ちます。
現代は、こうした手作業は少なく、田植え機を使うのが主流です。ただ、農書にも出てくる植え付けの深さは現代でも重要なポイントです。
自身や仲間がお腹いっぱいお米が食べられよう、サクナヒメと仲間たちは家の前の田だけではなく、新たに島に住む種族の田も借りて、稲作を始めます。
現代の農業でも、田を借りて栽培面積を広げる農家がいます。
収穫量を確保して農業経営を安定させるだけでなく、高齢で農業を続けるのが難しい人の田を引き受けることで、田が荒れるのを防ぐことにもつながります。そういう農家は、地域農業の「担い手」として重要な存在になっています。
農水省によると、「認定農業者」と呼ばれる農家などの担い手が利用している国内の農地面積は259万ヘクタール。国内の全耕地面積の6割を占めます。
田を借りて、米の栽培面積を増やしたサクナヒメと仲間たちは、「ヒノエ島」の農業の担い手と言えるかもしれません。
ただ、現代のように田植え機がなく、手で植えなければならないサクナヒメたちには、つらい作業が待っていました。
腰を曲げた姿勢のまま、ひたすら苗を植え続けるも、作業はなかなか終わりません。きつさのあまり、いらいらが募り、ついには仲間内で、けんかが始まってしいまいます。
すると、田右衛門の歌声が聞こえてきます。
♪根付きの悪さぁヨー
♪心根の弱さヨー
「田植唄だ」と、仲間の一人「きんた」が声を上げます。
サクナヒメたちが住む国の名前にちなんだ「ヤナト田植唄」の成り立ちが語られます。農作業の大変さから「話し込むと不平も増え、気が滅入る」と話す田右衛門に続き、サクナヒメの育て役、タマ爺が「そこで先人たちは、唄うことにしたのですな。唄えば、つらさもまぎれる」と説きます。
♪腰の痛さや 畝町の長さ ホイホイ
♪田植えばなしは田主は嫌い 唄で植えやれ楽々と
大変な作業を歌で楽しく乗り切りたいーー。そんな気持ちが伝わってくる歌詞も出てくる「日向田植唄」は、宮崎県で受け継がれている田植唄です。
これを後世に残していこうと、宮崎県の美郷町では毎年、伝統行事「御田祭」の前夜祭に「日向田植唄全国大会」が開かれています。今年は、くしくも「天穂のサクナヒメ」のアニメ放送開始日と同じ7月6日に開かれました。
美郷町によると、日向田植唄は、1000年近くの伝統がある地元の田代神社の御田祭で歌い継がれているという記録が残っているそうです。
「全国大会」と銘打ってから31回目の開催となった今大会は、小・中学生の「少年少女の部」から、76歳以上の「寿年の部」まで、4部門に計113人が町内外から参加。38歳の女性が総合優勝に輝きました。
日向田植唄は祭りの時だけでなく、かつては一般の田植えでも掛け合いのように歌われていたそうです。
劇中でも、田右衛門の歌声に合わせて、サクナヒメや仲間たちも一緒に田植唄を歌い始めます。
♪空き腹で~願う~
♪黄金原~
♪どっこいせー
みんなのけわしい表情はちょっと緩み、少しずつではありますが着実に、田植えが進んでいくのでした。
テレビ放送の時間帯と放送局は次の通り。
▽毎週土曜日午後11時から=テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
▽毎週火曜日午後9時半から=AT-X
▽毎週金曜日午前1時29分から=熊本県民テレビ
▽9月2日から毎週月曜日午前2時(毎週2話ずつ、最終回のみ1話)=富山テレビ放送
各種動画配信サービスでも配信されている。
(C)えーでるわいす/「天穂のサクナヒメ」製作委員会