2月の事故後、ウズラ卵の使用見合わせは「全国の学校給食に及んでいる」と担当者は明かす。8月は給食がなくなる夏休みも重なり、さらに在庫量がかさむことを懸念する。
記者は全国トップのウズラ卵産地、豊橋市の生産者にも話を聞くことができた。
「しばらく出荷量を調整してもらえないか。支払いも待ってほしい」。その生産者は、スーパーにウズラ卵を卸す食品加工業者に、そう頼まれたという。
記者が取材した豊橋市のウズラ卵生産者は、出荷先の食品加工業者に、そんな説明を受けた。連絡が来たのは6月。以来、卵の出荷量を一時的に減らすなどの対応を続ける。
一方、飼料代や燃油価格などの飼養コストは「少なくとも5年前と比べて2倍に増えている」と生産者。「少しでも販売収入を確保したいが非常に厳しい状況。消費が上向かないと事態は改善しない。打撃は大きくなるばかりだ」と先の見えない状況に頭を抱える。
食用にウズラ卵を扱う名古屋市の食品メーカー、天狗缶詰も状況は同じだ。主に愛知県産のウズラ卵を扱うが、「在庫状況が危機的な状況になることを懸念しており、契約した数量以上の受け入れは難しい」と打ち明ける。
ウズラ卵の販売環境は依然として厳しい状況にあるが、愛知県内では少しずつだが回復の兆しが見えてきた。
2月の事故後、県内でも学校給食での使用を止める動きが広がったが、新学期に入ると再開するところが出てきた。県教育委員会は「2学期のスタートに合わせて再開するところもある」(保健体育課)と話す。
ウズラ卵は、よくかんで食べるよう周知をーー。県教委は2月の事故後、各市町村の教委に対し、学校給食の現場でそう伝えるよう促してきた。「よくかむという食事の基本を守れば、安全に食べることができる」(同課)として、ウズラ卵の使用再開を後押しした。
スーパーなど小売りの現場でも「学校給食での再開と連動して、水煮などの消費が回復しつつある」(愛知県養鶏協会)。
学校給食での使用を止めている愛知県外の市町村教委の担当者は「安全性を考えながら判断する」として、2学期が始まる9月以降も再開するかどうかは未定だとした。記者が取材したところ、そうした対応を続ける教委は複数あった。
ウズラ卵の産地を抱える豊橋市も、豊橋市養鶏農業協同組合と豊橋養鶉農業協同組合、JA豊橋と連名で、市内の飲食店にウズラの卵の利用を呼びかけるちらしを配布。「ウズラ卵を使う飲食店も出始めた」(農業支援課)として、引き続き需要喚起に努める方針だ。
(中村元則)