
JAは、クレジットの販売を仲介業者のフェイガーに委託し、10アール当たり約3500円の収入を見込む。JA担当者は「新たな費用負担がなく得られる、貴重な収入だ」とみる。JAが「作業は農家自身で完結してほしい」とした上で参加を募ったところ、24年産で42戸の農家が手を挙げた。
水田の中干し期間は1週間以上延長する必要がある。農家が取り組みを収益化するためには、スマートフォンでの写真撮影や作業記録の入力などが必要だ。「作業は簡単だった」との声がある一方で、スマホの操作に慣れていない農家では苦労もあった。JAによると、写真が手ぶれしてしまったり、入力に漏れがあったりするミスが散見されたという。

JA職員などが手助けする例もあったが、途中で断念する人もいた。農薬散布などで中干し期間中に水を入れざるを得なかったケースもあり、12戸が途中で離脱した。それでも30戸の717ヘクタールが残った。
一方で、作業が順調に進んだ農家も多い。同JA胆沢地域センターの高橋克明センター長は中干し延長に取り組んだ農家の1人。5ヘクタールで従来8日間だった中干し期間を、さらに10日間延長した。
高橋センター長は、写真撮影や入力作業は「1回10分ほどで、ほとんど負担にならなかった」と話す。作付けした「ひとめぼれ」では品質への影響も見られず、「収益化へ取り組む価値は十分ある」とする。
初年度となる24年産で、同JAは「手応えは十分」と評価。中干し延長に関心を持つ農家は多く、25年産では規模を拡大する見通しだ。
JA岩手ふるさとの中干し延長のポイント
■スマートフォンでの記録作業は農家自らで完結する
■農家の負担増は少なく、米の品質にも影響はなかった
■10アール3500円程度の収入が見込める
収益・難易度に地域差
農水省によると、23年産米で「J―クレジット制度」の中干し延長に取り組んだ国内の面積は、23道府県の約4600ヘクタール。今後、さらに拡大する見通しだ。ただ、収益性や難易度は地域によって異なる。
フェイガーによると、東北や北海道では10アール当たり約3000円の収入が見込める一方で、九州では同700円程度と差が大きい。また、「もともと中干し期間が長い産地は延長自体が難しい課題がある」(フェイガー)。
ただ、中干し延長の収益化に向けては追加費用が発生しない上、途中で離脱しても罰則などはない。JA岩手ふるさとの担当者は「挑戦する価値はある」と指摘する。
(鈴木雄太)