「皆さんが作っているサツマイモの種類が知りたいです」。本紙「農家の特報班」にそんな質問が届いた。送り主は香川県の9歳少年。一家で家庭菜園でサツマイモを栽培していて、品種などに興味があるという。子ども世代の食農教育に向けて、「農家の特報班」LINEの友だち登録者に協力を求めると多くの情報が集まり、サツマイモ品種のトレンドも見えてきた。
家庭菜園や自家用を含め、栽培しているサツマイモの品種名を募ったところ、13日までの7日間で34人から回答が集まった。
1位は「べにはるか」。「甘くておいしい」(兵庫県の60代女性畑作物農家)、「ねっとり」(宮崎県の30代男性野菜農家)と食味の評価に加え、「マルチを張るぐらいで、作業上の負荷はあまりかからない」(茨城県の60代男性無職)と作りやすさに着目する声も多かった。2位は「シルクスイート」、3位は「ベニアズマ」と続いた。
少年からは品種だけでなく、「芋を傷つけないで収穫するにはどうしたらいいか」「どんな料理にしているか知りたい」との質問も寄せられた。これらにも、専業農家から家庭菜園の愛好家まで多くの人から回答が届いた。
スコップで掘ったら傷が… どうすれば
質問を寄せた少年は、家族と家庭菜園で「パープルスイートロード」「べにはるか」などを栽培。毎年、手とスコップで掘るが「今年も大きいスコップで掘るとき、バキッと傷付き割れました」という。「芋を傷付けずに掘り取る方法を知りたい」との相談を受け、助言を募った。
つるが出ている根元から掘るのではなく、根元の回りから「深く、ゆっくり掘り進めてみて」。「べにはるか」を主体にサツマイモを栽培する熊本県の60代男性野菜農家は、芋を傷つけずに収穫する方法をそう提案する。
「鳴門金時」を栽培する埼玉県の70代男性兼業農家は最初に「長靴の先で、芋の軸の手前の土に軽く触れて、芋の位置を確認する」という。その後、「手前10センチくらいから掘り進める」との手順を紹介する。
「べにはるか」を栽培する鳥取県の70代女性畜産農家も「つるを除去した後、芋に当たらない場所を確認する」という。そこに「剣先スコップを深く入れ、てこの原理で持ち上げて」と勧める。
「べにはるか」を栽培する兵庫県の60代女性畑作物農家は「まずは株元の土を少し手で掘り、つるの方向を確認して」と説明。「芋もその方向にあるので、反対側からスコップを入れる」と話す。
焼き芋、サラダ… レシピずらり
少年は料理にも興味があり、野菜を使った煮込みスープなどもよく作るという。「サツマイモをどんな料理にしているか知りたい」との質問も寄せられた。
「焼き芋」を挙げた東京都の60代女性は1個ずつアルミホイルで包み、オーブンに入れて160度で90分焼くレシピを紹介。「低温で長時間加熱することで甘くなる」と薦める。
この女性は複数のレシピを提供。韓国式サツマイモの煮物「コグマジョリム」は、丸ごとゆでた小ぶりの芋をやや多めのみりんとしょう油で味付ける。スライスしたレモンと芋を重ね、ハチミツと水で煮詰めた「ハニーレモン風味」。沸騰させたグラニュー糖と牛乳にバターを加え、芋と混ぜ合わせて加熱、最後にシナモンパウダーを振る「キャラメル風味」など、多彩な料理を紹介した。
群馬県の50代女性畑作物農家は「大学芋。おやつで食べるなら甘めに、ご飯のおかずにするなら、しょう油の味を利かせる」と話す。自ら栽培する「べにはるか」など、しっとり系品種を使うことが多いという。
「鳴門金時」を栽培する奈良県の50代女性花き農家は“ポテトサラダ”を挙げる。農家友だちから届いたオレンジの「ハロウィンスウィート」、紫の「ふくむらさき」と、自身の「鳴門金時」を合わせて色鮮やかなポテトサラダにした。
調査結果受け少年は…
「来年挑戦したい」
一連の調査結果を少年に伝えると、栽培品種は「甘い品種が人気なんだなあ」と関心を示し、「『あまはずき』は初めて知りました。来年挑戦しようかな」との答えが返ってきた。
自身が栽培するサツマイモは雑草に負けることがあり「ちゃんと管理しなきゃ」と意気込んでいた。
芋を傷付けずに掘る方法は「ゆっくりではなく、サッと掘るからダメなのかな」として、集まった助言を「試してみよう」と話していた。料理は「うちは天ぷらが主流」とした上で、数々のレシピに注目していた。