調査に当たり、会社のルールや手続きを定めた「会社法」など関連しそうな法律の条文を当たったが、第三者委に関する記述は見つからなかった。
そこで、都内の図書館で関連書籍を探索。ある書籍で「第三者委員会のルーツは山一証券で設置された社内調査委員会」との記述があった。著者は弁護士や研究者などで構成する「第三者委員会報告書格付け委員会」のメンバー。同委員会に連絡を取ると、同委員長で弁護士の久保利英明氏が取材に応じた。
久保利氏は「不祥事を起こした民間企業が信頼回復のために取り入れ、定着してきた手法」と説明する。海外では例がなく、日本特有の取り組みという。
不祥事を起こした組織は、消費者や投資家の信頼回復のために、実態や原因の公表が求められる。だが、組織内部の人間が、中立の立場で調査するのは難しい。そこで、当事者や利害関係者でない「第三者」が委員会をつくり、組織の代わりに調査・報告を行う手法が出てきた。
「第三者委は権威があるのか」。読者から寄せられた質問に久保利氏は「委員会に強い権限や法的拘束力はない」と回答。むしろ、ずさんな体制で調査をまとめる例が増えており「第三者委という肩書だけで信用すべきではない」と強調する。
例えば、2018年に発覚した厚生労働省の統計不正問題で設けられた第三者委は、同省から多額の交付金を受け取っている団体の理事長を委員長に任命。「組織構成と調査手法に大きな問題が複数あった」と指摘する。
久保利氏は「第三者委がまとめた報告書の中身を国民一人一人が確認していくことが大事だ」と訴える。
(金子祥也)
