「農家の特報班」LINEの友だち登録者に8日までの7日間、回答を募った。日本漢字能力検定協会の「今年の漢字」は「金」。一方、特報班に寄せられた55件の回答に「金」はなく、天候や心情、作物を表す字が多かった。
「暑」を挙げたのは6人。福岡県の50代男性野菜農家は「とにかく暑かった」と振り返る。暑さは農業生産にも影響を与えていて「ナスの生育不良が今も響いている」と話す。
「酷」は5人。栗を栽培する岐阜県の70代男性果樹農家は「酷暑・温暖化対策が必要なことがはっきりした年」と実感する。
「米」は4人。米価の浮揚を喜ぶ声は多い。値上がりを報じるメディアの姿勢に違和感を持つ人も複数いた。資材価格などが依然高止まりする中、香川県の60代男性農家は「米は決して高くはない」と強調する。
多様な回答が届く中、それぞれが1字に込めた思いを探ると、喜びや苦しみを抱えて1年を乗り越えた農家らの姿が見えてきた。
「活」を今年の農業を表す1字に挙げたのは、富山県の60代男性水稲農家。浮揚した米価は「生産原価に近づいた」と感じ、「将来への活路を切り開き、安心のおいしいお米を家族や知人に食べてもらうことを生きがいにしたい」と話す。
半面、「農機具の更新や労働報酬を考えると、今後も継続できるか不安はある」と打ち明ける。「今が頑張りどころかな」と決意を新たにする。
「進」と回答したのは、長野県の50代男性果樹農家。今夏は高温下の水管理などに苦労し、ブドウの一部では裂果も出たが、「それでも、めげない、投げない、くじけない」と前を向く。
「何があっても常に研鑽を絶やさず、前に進むということを貫いた一年だった」と振り返る。来年に向けて、散水設備の導入も検討しているという。
「猛暑での農作業、特にあぜの草刈り」に苦労したという兵庫県の60代男性水稲農家の1字は「苦」。今年は高齢のため田植えができなくなった知人の1ヘクタールを急きょ引き受け、面積が広がった。「家族3人で頑張った」と振り返る。
夏は気温が下がらず「草刈りが追い付かなかった」という。まずはコンバインの出入り場所の草刈りを優先。手付かずだった分は秋に回し、12月も草刈りを続けた。「秋耕をしたいが手が回らない状態」と年末も高温の影響が尾を引いた。
群馬県の60代男性性野菜農家にとっての1字は「耐」。栽培するズッキーニに高温障害が出る中、「自然災害に耐えて管理することが大事」との思いを込めた。
高温や豪雨に見舞われ「ズッキーニの実が良くできず、植え付けた苗も枯れてしまった」と話す。不作に苦しむも「販売価格は良かったのでカバーできた」と胸をなでおろす。
熊本県の50代男性花き農家は「看」を挙げた。夏と秋に体調を崩すも、家族の協力を得て花き栽培を維持した経緯を振り返り、「今年の看病に報いるため一層仕事に励む」と話す。
体調が回復するまでは「なかなかの日数がかかった」という。「誰も愚痴もこぼさず、この機会に良く休んでと、いたわってくれた」として、「愛に勝るクスリなし」と改めて家族に感謝する。