回答者129人のうち、「米」を挙げたのは22人。三重県の50代女性稲作農家は、最近の米不足を受け、国民の中で「お米が見直されてきた」と実感。「やっぱり日本人に必要不可欠な食べ物」として米と回答した。資材費の高騰が続く一方、「値上げし過ぎると受け入れられない」とも感じており、「価格はバランスを取ることが大事」と考える。
2位の「ブドウ」は12人で、5人が「シャインマスカット」を挙げた。味に多くのファンがいる中、広島県の70代女性水稲農家は、農家ならではの「最高に幸せな一時をシャインでも味わいたい」と話す。

新米の季節は、自宅で選別後に残る米を「すぐに精米して食べる時が最高に幸せ」という。「シャインマスカット」を栽培して「出荷できないシャインは新米と同じように味わって、幸せな一時を過ごしたい」と話す。
3位は「イチゴ」。宮崎県の30代男性野菜農家は「みんな大好き」と強調。その上で「消費者の『うれしい』『楽しい』場面に欠かせない。おいしいイチゴを生産し、そんな場面を彩る仕事をしたい」と作り手としての意欲を燃やす。
「あの美しさに魅了された」「高単価で売れそう」。上位の品目に限らず、さまざまな思いがこもった声が届いた。
アンケートは知識や技術、農地などは気にせず、自由な発想で考えてもらうよう呼びかけた。憧れに思い出、経営戦略ーー。さまざまな思いを込めた回答が届いた。
■心奪われる一品
「ミカン」を挙げた北海道の50代女性畑作物農家は、「果物で一番好き」という理由とともに「ミカンの花を見たことがない」と話す。
道東部で麦やビートなどを生産し、ミカンの開花時期は農繁期で「旅行も行けない」。そんな中、昨年春に購入したレモンの苗が秋に花を咲かせた。「これから苗が育って、どう実を付けるか楽しみ」と期待。屋外の気温が氷点下になることも多い中、苗は家の中に置いて成長を見守る。

大阪府の50代男性野菜農家は「箱詰めしたとき、宝石のような赤色が美しい」とサクランボ「佐藤錦」を挙げた。毎年、旬の時期に購入し、見た目だけでなく味も「とてもおいしい」と話す。

自身は水ナスや青ネギなどを約30年間栽培してきた。野菜にはない果樹の1年1作は「大変かも」としつつ、味と見た目に魅了された「佐藤錦」への思いは強く「挑戦してみたい」と話す。
香川県の9歳男子は「オカワカメにオカノリ、オカヒジキ、グラパラリーフ」と、小学生ながら店頭に並ぶことが少ない野菜を複数挙げた。

中でも、ツルムラサキ科の野菜で、葉をゆでるとワカメのようになるオカワカメには思い入れがある。出合ったのは「ときどき行く産直市」。「どんな野菜かなと思って買ってみたら、本当にワカメみたいでおいしかった」と振り返る。
他にも知らない野菜があるか図鑑で調べ、オカノリやオカヒジキなどを知ったという。「スーパーで売っているのを見たことがない。たくさん作って広めたい」と思い描く。
■アニメの影響も
家族への特別な思い入れとともに、イチゴ「あまおう」を挙げたのは福岡県の60代男性JA役員。自身が小学校低学年の頃から55年、イチゴを栽培してきた父母が「今年いっぱいでリタイアしようとしている」という。自分は「イヤイヤながら少しばかり手伝ってきた」と打ち明ける。

そんな経緯もあって「生まれ変わったら、2年前に亡くなった妻と一緒にイチゴを作り、消費者に届けたい」と話す。
神奈川県の60代女性農家は「わが家の直売所でも人気品種だった」という、トマト「サンロード」を挙げた。「自分が食べて、おいしいと思うトマトを作りたい」と考えて選んだ品種。「甘みやコクがあって、おいしい」と太鼓判を押す。「あの味をもう一度作りたい」と願う。

長野県の60代女性野菜農家は「昔のアニメの影響からか、潜在的に欧州の田舎への憧れがあって」と話し、「放牧で牛や羊の飼育にワイン用ブドウ、花き」を挙げた。

記憶に残るアニメ作品は「アルプスの少女ハイジ」。自身の農業は、野菜の出荷と定植、芽かきなどが重なり「農作業は好きだけど、それで一年が終わってしまう感覚」と話す。一方、ヤギを飼いながら山小屋に暮らす劇中の暮らしは「便利な生活とは真逆。でも素敵と思って」と話す。
■農業経営見据え
ブドウ「クイーンニーナ」を挙げた埼玉県の30代男性野菜農家は「大好き!」とした上で「贈答用としても人気。高価格帯で販売できそう」と見込む。
自身が手がける品目の野菜と比べて価格が高いため「薄利多売にならない品目に魅力を感じる」と話す。
福岡県に在住し、佐賀県の親類の農作業を手伝う30代男性公務員は複数品目を挙げ、うち「大豆」は「多収で葉焼病に強い新品種そらシリーズ」に着目する。
「そらたかく」「そらみのり」は「今、栽培している品種よりも多収で病害に強い点が魅力」と実感。「10アール当たり収量300キロを目指すならこの品種しかない」と有望視する。

[アンケート概要] 16日までの7日間、LINEで「農家の特報班」の友だち登録者やインターネット上で呼びかけた。無作為抽出の世論調査とは異なり、本紙読者の多様な意見を聞くため調査した。43都道府県の129人が回答。農家や農業法人の従業員ら農業生産に直接携わる84人に加え、JA役職員や公務員、会社員ら45人が参加した。