[ニッポンの米]今夏も不足? 民間在庫110万~130万トン 6月末時点を本紙独自試算
農水省が公表する在庫量の統計は、➀毎月公表するJAなど出荷・卸など販売段階の民間在庫➁年に1度公表する6月末民間在庫――の二つある。➀の調査対象の範囲は、年間取扱量が500トン以上の出荷段階と4000トン以上の販売段階の在庫。➁は、➀の対象に加え、500~4000トンの販売段階、生産者の生産段階、もち米の在庫を対象にし、米の需給を判断する重要な指標となる。
➁の今年6月末の民間在庫量について、同省は前年比5万トン増の158万トンと見通す。ただ、産地や流通関係者らは、「米の不足感が前年以上に強い。本当に158万トンも残るのか」と疑問視する。
本紙がこれまでの統計を基に試算した。
➀の統計を見ると、直近12月末時点が253万トンで、前年比44万トン減。仮に同じ減少幅で推移すれば、6月末の出荷・販売段階の在庫量は71万トンになる。
➀の在庫量に、産地や小規模業者の在庫などを積み上げたものが➁の在庫量となる。前年6月末には、産地や小規模業者の在庫として38万トンあった。単純に➀の71万トンに足すと、109万トンになる。
2024年産米を巡っては、JAなど大口業者の集荷量が12月末時点で前年より21万トン少ない。その分を生産者や小規模業者が在庫として抱えていた場合、➁の6月末在庫量は130万トンになる。24年産生産量は前年より18万トン増えているものの、今夏の在庫量は前年を大きく下回る可能性がある。本紙の試算結果を踏まえて、6月末在庫量の見通しを確認したところ、農水省は「今後の動向を注視していく」(企画課)と回答した。
前年に続く夏場の米不足を懸念する流通業者らが多い。大手米卸は「既に通年供給が難しい在庫水準」と判断し、家庭向けの販売制限を決めた。ある商社は、国家貿易枠外となる民間貿易で、既に数千トンの輸入米を確保したという。
同省は13日、流通上の米不足解消へ、政府備蓄米を21万トン放出する方針を固めた。「一定にインパクトがある水準」(米卸)など驚く声もあり、今後の需給や価格への影響に関心が集まる。