相次ぐ農道陥没 トラクター転落も インフラ老朽化
国土交通省によると、道路陥没は全国で1万548件(2022年度)に上る。埼玉県八潮市では先月、下水道管の損壊が原因で道路が大規模陥没する事故が発生。国が全国の下水道の点検や対策検討に乗り出す事態になっている。
新潟市では過去5年間に起きた下水道管老朽化による道路陥没は371件に上った。24年8月には、地下の破損した下水道管の中に土砂が流出し、トラクターが通った重みで農道が2メートル陥没。運転していた男性がトラクターごと転落した。
福岡県久留米市では23年度、道路陥没が124件発生した。23年10月に起きた事故では、道路下に埋設されていた農業用パイプラインが破損し、漏水で道路に長さ10メートル、横5メートルの穴があいた。農業用水を管理する耳納山麓土地改良区は、「まさか破裂して道路が陥没するとは農家の誰も思っていなかった。水が出てきたなどこまめにチェックするが、どんな対策が現場レベルでできるかは分からない」と話す。
岡山県津山市でも23年11月、地下に埋まる農業用パイプラインが破裂、漏水して道路が陥没する事故が発生。付近にあった農業倉庫が浸水した。
農水省によると、農業用水利施設の事故は22年度で1623件発生した。経年劣化などが原因で増加傾向にある。老朽化は深刻で、標準耐用年数を超過する基幹的水路は46%にも上る。
東京大学大学院農学生命科学研究科の高木強治教授は、「土地改良や農家、自治体といった管理者が農業用パイプラインなどを日常的に管理、点検することが必要だが、地中に埋まっていると目視では把握できない。事故が起きてからではないと問題が把握されにくい構造にある」と指摘。効率的な保全や更新が求められるとする。