有機JAS認証事業者は55人と市町村別全国1位(2024年)の山都町。生協の拠点や生産者出資の販売会社もあり、有機農業で課題になりやすい販路開拓に成功している。一方、高齢化や担い手の減少で需要に供給が追い付かない課題がある。
そこで町は県の認定研修機関である山都地域担い手育成総合支援協議会で研修生を募集。年3人を上限に受け入れ、18~24年は9人が修了し、うち6人が有機農家となった。
町は有機JAS認証面積(耕地面積割合)を21年の90ヘクタール(3%)から27年は234ヘクタール(8%)とする目標を設定。既に取り組んでいる農家に対しても、認証にかかる経費を補助する他、面積拡大分も補助する。堀豊生さん(66)も補助を使い、有機JASを毎年更新する一人だ。八つの生産グループや五つの専門部会をまとめる町有機農業協議会の会長で、標高600メートルのハウス45アールで小松菜を栽培する。安定出荷までに10年かけたが、今や年2000万円を売り上げ、引き合いが強い。堀会長は町で就農する魅力を「冷涼な気候で温暖化に対応しやすい。優良な畑も確保できる」と語る。

自信持って値付けを
民間では有機農業の学校「オーガニックスマイル」が22年度に開校した。コープ自然派事業連合(神戸市)などが立ち上げたNPO法人で、町も資金を援助。小祝政明氏の提唱するBLOF理論(生態系調和型農業理論)を教える。3年間で7人が町で就農し、4期生も3人が就農予定だ。修了生で大阪府から移住した堅尾大司さん(43)は「仲間がいて知識が共有される。考える農業ができるようになった」と話す。鳥越靖基校長は「生産力を高めて山の都(山都町)に文字通りのオーガニックビレッジを作りたい」と意気込む。

坂本靖也町長は「有機農業の機運は高まっており、町外からの就農も多く、さらに拡大したい」と話す。有機、減農薬、慣行とどの方法でも安定経営できるよう、JAや関係機関と一緒に取り組むとし、「有機は手間がかかる分、消費者には理解して買ってもらい、農家は自信をもって値付けしていいとの認識を広げたい」と言う。
(柴田真希都)
有機農業普及のポイント
■研修で先輩農家から教わる
■理論を身に付け考える農業へ
■行政が認証取得や面積拡大に補助