私は今、小学生向けに食育出前授業を行っています。なぜかというと、それは娘が小学1年生になったばかりの頃、「牛肉って何のお肉?」と言われたからです。私はその時、驚きを隠せませんでした。そして、お肉になるまでのプロセスを、現代の子どもたち(親も含めて)に発信したいと思ったのです。
現代は当たり前のようにモノがあります。誰がどのようにしてこの食材を作ったのかということはあまり知られていません。日本の匠たちが作り上げたメイド・イン・ジャパンである和牛の本当の価値を、そして川上にいる職人さん達のひたむきな仕事をもっと知っていただきたいと思います。
手塩にかけて育て上げた農家さん、生きている家畜を失神させ放血する作業を、毎日何頭も迅速正確かつ丁寧に行っていると畜場の職人さん、枝肉から骨を抜く職人さん、彼らのおかげで私たちはお肉を食べることができるのです。家畜の命をいただいている感謝の気持ちを、私は大切にしたいと思います。
農家さん、職人さんたちによる「命のバトン」をつないで、アンカーである消費者がおいしく残さず食べてあげること。今までなんとなく言っていた「いただきます、ごちそうさま」を、食材や目の前で調理している人に対してだけではなく、「川上にいる人達のおかげで」という気持ちになれば、和牛の価値がさらに高まるのではないかと考えます。

総合養成科第54期生
肉のばんば家・馬場典之)