国民は牛も豚も鶏も食べますが、とりわけ豚肉は生活に密着していて、昨年の生産量は枝肉ベースで310万トンと日本の2.4倍、消費量は330万トンと一人当たりに換算すると日本の1.5倍です。
町にはスーパーやコンビニも増えてきている一方で、市民の買い物は伝統的な市場が存在感を放っています。コールドチェーンの普及はこれからというベトナム、国民の冷蔵庫保有率も50%ほどといわれています。この国ではどうやって食肉が流通しているのでしょうか。
一言でいうと、食肉の大半は常温で流通しています。まず、と畜は夜中に行われ、すぐに解体が始まり、あっという間に部分肉になります。豚肉は骨付きのまま分割され、バイクの荷台に積まれて、夜明け前には町の市場に搬入されます。そこは早朝から買い物客でいっぱいで、お肉屋さんはお客さんの要望に応えてブロックにしたり包丁でスライスしたりして販売します。肉は抜群に鮮度が良いため、臭いもありません。買い物を済ませた主婦たちは、肉についた細菌が増える間を与えず、その日のうちに調理して夕食までに家族皆で食べてしまいます。ベトナムでは肉は基本的によく煮て食べるため、食中毒の心配もさほどありません。このような生活に冷蔵庫は必要ないのかも知れませんね。
公益社団法人全国食肉学校
総合養成科第23期卒業
専務理事学校長
小原和仁