[論説]規格外農産物の活用 流通の在り方考える時
気象庁によると、8月の気温は全国のほぼ全ての観測地点で平年を上回り、北・東日本は観測史上最高値となった。猛暑で干ばつとなり、水を十分に作物に供給できない産地もあり、米や野菜などの生育に影響が出ている。
その結果、幅広い品目で品薄高となっている。露地キュウリが曲がったり尻太りになったりして規格外が増えている産地もある。見た目は少々悪くても、味は変わらない。規格の在り方を見直し、利益を生む仕組みをつくることが、農家の所得向上や困窮世帯への支援、食品ロスの削減につながる。
岐阜県のJAいび川は、2019年度から需要の見込めるカットフルーツ向けなどに規格外の柿を出荷している。22年度は目標の30トンを2・5倍上回る74・4トンに達した。
地域の子ども食堂やフードバンクなどに提供している事例もある。山梨県とJA山梨みらいは8月から、規格外や余剰農産物を同JAの直売所で一時保管し、定期的に子ども食堂に寄付している。
静岡県三島市のSalveggie(サルベジー)は、選果の段階で規格外となったり、豊作で余剰となったりした野菜を「はじかれ野菜」と名付けてイベントや加工品にして販売している。担当する岡本雅世さんは「畑から食卓まで関わる全ての人が、今後の農産物流通や規格について真剣に考える必要がある」と訴える。地球温暖化が進めば形が不ぞろいな農産物は続出する可能性は高い。規格の在り方を見直す時にきている。
一方、課題もある。規格外や余剰農産物を収穫し、出荷するのも農家の手間がかかることだ。その負担を考えれば「廃棄した方が楽」と考える農家もいる。廃棄せずに、経済的な価値を生む仕組みづくりが必要だ。
消費者庁が5000人を対象に行った食品ロスに関する21年度調査によると、規格外農産物・食品を「知っていた」人は48%で、このうち9割以上が「形や見た目が悪くても品質(味)が変わらなければ購入する」「通常品よりも値下げされるのであれば購入する」と回答。「知らなかった」人(32%)でも、規格外品を購入する意向がある人は6割を超えた。
傷一つなく変形していない農産物だけを出荷するという、流通の在り方を今こそ考え直す必要がある。