[論説]日米交渉と自民党決議 情報開示し農家を守れ
決議は食料安全保障強化本部長である森山裕幹事長らが25日、江藤拓農相に申し入れた。森山幹事長は「(交渉の)内容によっては大変なことになる。食料の安全保障が守られる結論となるよう努力をお願いしたい」と要請、米の市場開放は全く議論していないと強調した。これに対し、江藤農相は「国内の生産基盤を傷つけることはあってはならない」と答えた。決議を踏まえ、政府は毅然とした姿勢を貫いてほしい。
農水省は4月に策定した食料・農業・農村基本計画で、食料安全保障の確保に向けて国内の農業生産を増大し、農家の所得を向上させる方針を明記した。米をはじめとする農産物市場を開放した場合、農業経営は大打撃を受け、新たな基本計画も根底から崩れることになりかねない。日米関税交渉で、農家の経営安定や日本の食料安全保障に禍根を残すようなことは絶対に避けるべきだ。
米国との2回目の協議を直前に控え、自動車と引き換えに米などの市場開放を迫る論調が国内で相次ぐ中、農家は不安と不満を募らせている。赤沢経済再生相は「(日米)それぞれに優先順位があり、関心が高いものをメインにテーブルに乗せて話し合う。それが何なのかを大体2回目には決めたい」と述べた。米は日本の主食であり、国内の水田を維持する上で譲れないことを強く主張すべきだ。
通商交渉は相手があることで、交渉途中の情報を出せない事情は一定に理解できる。だが、米は守れるのか、牛肉はどうなるのか。政府として情報を出せる部分は開示してもらいたい。自民党が「農林水産品を犠牲にするな」という決議をまとめても、一方で市場開放を求める論調が出回り、情報は錯綜している。それが農家を不安にさせる。営農意欲を失わせるような交渉にしてはならない。
米国産「カルローズ」は中粒種で主食用として売買同時入札(SBS)などで輸入されているが、産地は民主党支持基盤のカリフォルニア州だ。政権への支持拡大を目指す共和党のトランプ大統領にとって、米がどこまで最優先課題なのか疑問が残る。米国が求める対日貿易赤字の削減にもほとんど寄与しない。
石破茂首相は「食の安全を譲ることはない」と述べた。米をはじめ、農産物は守ると約束すべきだ。