[論説]地域計画で見えた課題 食支える担い手確保を
地域計画は、人と農地の将来方針。10年後、誰がどの農地を利用するかを落とし込んだ目標地図などの策定が市町村に義務付けられ、3月末が期限だった。
策定を終えたのは、1613市町村の1万8633地区。カバーする農地面積は424万ヘクタールに達する。地域農業の現状への危機感と、次世代につなぎたいという生産現場の強い思いの表れだろう。
ただ、農水省によると、地域計画の多くは将来の農地利用の姿がまだ明らかになっていない。今後も話し合いを続け、内容をさらに高めていくことが大事になる。
同省は、生産現場の意向を反映した地域計画を力に、農地の集積を加速する方針。新たな食料・農業・農村基本計画では具体的な指標も設けた。担い手への集積率を、現状の6割から2030年度には7割に高める。水稲を15ヘクタール以上作る経営体の面積シェアも3割から5割に上げる。農地を団地のようにまとめる集約化や圃場(ほじょう)の大区画化、スマート農業技術の導入を強力に進め、広い面積を効率的にカバーできるようにしていく。
こうした方針は、担い手の減少を直視した対応策である。しかし、あまりに減り過ぎた場合、地域農業を守り切れるのだろうか。同省は、24年に111万人いる基幹的農業従事者が、40年ごろには30万人に急減するとの試算を示した。ショッキングな見通しで、農村を維持できるか不安が大きい。担い手減少に歯止めをかける努力が、同時に必要ではないか。
そのためには、安心して再生産でき、後継者に経営を託せるだけの十分な所得確保が鍵となる。基本計画は、所得向上を実現する道筋として、生産性と付加価値の向上に加え、今回、適正な価格形成を柱に据えた。この新機軸の政策に期待が集まる。
適正な価格の実現には、食を支える農業の価値を消費者が評価してくれるかが焦点だ。米を巡る混乱では、価格の動きばかりに関心が集まり、安さを求める声も大きい。本当の理解には程遠い。
地域計画も、理解のきっかけとしたい。浮き彫りになった生産基盤の弱体化、先細る食の未来は、消費者にとって“自分ごと”である。生産現場が地域計画を作り、動こうとしている今こそ、食と農を守る強力な政策が必要である。