[論説]宮崎口蹄疫15年の教訓 家畜伝染病食い止めよ
家畜疾病の侵入リスクは高まっている。4月11日には、宮崎県内で初めて野生イノシシで豚熱のウイルスに感染していることが確認された。昨年は、福岡県などで牛のランピースキン病が相次いだ。農水省は家畜伝染病予防法に基づき、都道府県知事の命令で、強制的に殺処分できる対象を同病に感染した牛(患畜)や、症状が出ている牛(疑似患畜)に広げる方針を固めた。
国内未発生のアフリカ豚熱は、2018年に中国で初確認されて以降、アジア各国で拡大。東アジアで未発生の国・地域は、日本と台湾だけだ。有効なワクチンがなく、まん延防止には物理的に封じ込めるしか方法がない。長崎県対馬市まで約50キロの距離にある韓国・釜山では23年末から断続的に、野生イノシシで同病の発生が確認されている。
ひとたび発生すれば、畜産が危機的状況に陥りかねない家畜伝染病。宮崎県では4月、口蹄疫発生から15年を迎えた。封じ込めに向けた産地、関係者の努力を教訓としなければならない。口蹄疫は、ウイルス感染で起きる急性熱性伝染病で、最も警戒すべき家畜伝染病の一つ。牛や豚などほとんどの偶蹄類で感染し、伝染力が極めて強い。発病すれば発育や運動、泌乳障害が生じ、農家は経済的、精神的に大きな打撃を受ける。
同県都農町で10年4月20日に初めて確認されて以降、県内各地に拡大。8月27日に終息宣言が出るまで、牛や豚など約30万頭が犠牲となり、発生戸数は292戸に上った。現在、国内での発生はないが、東アジアを中心に発生が続いている。今年3月には、韓国南東部で約2年ぶりに再発が確認され、4月14日までに19件に拡大している。何より2000年と10年に宮崎県で発生した際、その前に韓国で発生が確認されていたことから、警戒を緩めてはならない。
大型連休を迎え、畜産農家は改めて防疫を強化しよう。消石灰は約1週間で消毒効果がなくなる。長靴はしっかり消毒し、畜舎に出入りする基本的な動作を再確認したい。感染を少しでも疑う事例があれば検査しよう。
違法な肉製品の持ち込みには、動植物検疫探知犬の増頭や厳罰化を求めたい。産地に加え、空港や港湾、主要駅などの水際対策を強化し、家畜疾病の侵入を食い止めよう。