[論説]冷凍食品の市場拡大 産地育てシェア奪還を
日本冷凍食品協会がまとめた2023年の冷凍食品の出荷額は、前年比2・1%増の7799億円。1968年の統計開始以来、過去最高になった。今年2月の同協会の利用実態調査でも、「調理が簡単で便利」「おいしいと思う商品が増えた」「手頃な値段」などの理由で、昨年より2割が冷凍食品の利用を増やしていることが分かった。今後の市場動向について同協会は拡大基調を見込む。
課題は、国産のシェアをどう高めるかだ。23年の冷凍野菜の輸入量は約112万トン。前年より3%減となったが、過去10年で見れば2番目に多い水準だった。輸入額は3042億円と初めて3000億円を超え、統計開始以来、最高となった。一方、国産原料を主体とした冷凍野菜向けの国内生産量は約6万トンに過ぎない。旺盛な需要が見込まれる冷凍食品市場で、国産は全体の5%にとどまる。
需要の高まりを受け、小売りは販売を強化する。日本生活協同組合連合会の23年度の冷凍食品売上高は前年度比4・5%増の約650億円で過去最高を記録。05年度比は71%増だ。店舗、宅配業態ともに冷凍食品の取扱数や売り場面積を増やしている。国産を求める声を受け、同連合会は“国産素材”マークを付けた冷凍食品を販売する。他にも農業法人や青果卸、人材派遣業など、多様な業態で国産原料を使った冷凍野菜の生産、販売事業が始まっている。こうした機運を高めたい。
技術開発も進んでいる。急速冷凍で解凍後の食感を維持する技術だ。技術開発したメーカーは「直売所などでの売れ残り対策に貢献できる」と指摘する。野菜・果実の規格外品や直売所の売れ残りなどを廃棄することなく、カットして凍結させて販売することで食品ロスの低減や農家の所得向上につながるという。
国も増産を支援する。農水省が4月に始めた「国産野菜シェア奪還プロジェクト」は、カボチャなど端境期の増産が難しい品目などで国産冷凍野菜の安定供給を検討。冷凍加工施設を整備する際に費用の一部を支援する。同省は「冷凍野菜はシェア奪還の柱の一つ」として位置付ける。
冷凍野菜の拡大には、冷凍加工に適した栽培技術や調製施設の整備面で課題もある。小さな産地や企業だけで対応するのは難しい。需要が見込める冷凍野菜の国産シェア拡大へ官民一体で取り組もう。