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そんなことを思い出したのは、人口戦略会議(三村明夫議長)が4月に発表した744の「消滅可能性自治体」リストに大潟村の名を見つけたからだ。2014年に日本創生会議(増田寛也座長)が発表した896市区町村にはなかった。
「農業の大規模化、産業化が進み(中略)若者流出に歯止めをかけている」。同じ年に出版された「地方消滅」(編著者は増田氏)は大潟村をこう評した。「もうかる農業」ができているから若者が農業後継者として残るということだ。
その大潟村が、なぜ今回はリストに入ったのか。一つの仮説だが、農業、特に米に偏った産業構造が一因ではないか。村民の8割が農業に従事し、農業産出額の9割を米が占める。村は多角化に取り組んでいるようだが、まだ米への依存度は高い。その米の消費が減り続けている。
大規模なモノカルチャー(単一作物)型農業は効率的だが、市場環境の変化に弱い。むしろ、小規模ななりわいを多様な主体が営む「多業」型の地域経済の方がレジリエンス(危機に耐える力)は高いように思う。
今回のリストで、もう一つ目を引いたのは島根県だ。県内19市町村のうち、前回入った12市町村が外れた。特に邑南町、美郷町、川本町などの中山間地域や海士町、西ノ島町などの島しょ部が目立つ。邑南町や海士町は地域資源を生かして関係人口や移住者を呼び込み、活性化に成功したことで知られる。
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両リストは「20~39歳の女性が30年間に50%以上減少する自治体」という機械的な基準で選ばれた。女性を「産む機械」とみる発想に違和感があるし、住民に無力感を抱かせて「集落たたみ」へ誘導するのが狙いでは、と勘繰りたくなる。
地域の将来を単なる人口動態や経済合理性で決めるのは誤りだ。個別の事情を踏まえ、当事者主体で丹念に合意形成を図る必要がある。
国や自治体の役割は住民に寄り添い、その議論を促すことだ。それが「地方創生」の10年間に最も足りなかったものだろう。