[論説]相次ぐ農家の熱中症 対策強化し命を守ろう
農水省によると、7月3~8日に農作業中の熱中症で10人が死亡し、2022年の死者数(29人)の3分の1に達した。梅雨明け前に熱中症が急増したのは「異常事態」(同省)という。全国の熱中症による救急搬送者も1~7日に9105人と、前週の4倍に。梅雨明け後の一層の酷暑に厳重警戒が必要だ。
熱中症のかかりやすさは、「気温」「湿度」「日射・放射」が影響し、「暑さ指数」として表される。「気温と湿度がともに高い」「地面からの照り返しが強い」などの条件が重なるほど暑さ指数は高くなり、熱中症リスクも高まる。気温だけを見て判断すべきではない。
特別警戒アラートは、暑さ指数が都道府県内の全観測地点で35以上になると予想される場合、前日の午後2時ごろに環境省が発表する。警戒アラートよりも厳重な対策が求められ、自分だけでなく周りの命を守る行動を呼びかける。同省の熱中症予防情報サイトで各地の指数を調べられ、メールで受け取れる。ぜひ活用してほしい。
農業は1人や少人数での作業が多く、倒れても発見が遅れがちだ。暑さ指数を参考にしながら作業全体を見直そう。家族や周囲の人と作業場所や時間などの情報を共有しておくことも重要だ。高齢者や子どもなど熱中症のリスクが高い人にも目を配りたい。「大丈夫ですか」「ひと休みしませんか」と、ひと声かけるだけで救える命はある。
熱中症を防ぐ資材も積極的に活用しよう。ベスト内のチューブに冷水が巡る構造の水冷服や、腕時計のように装着して光と振動で熱中症のリスクを確認できるバンドなど、さまざまな資材が登場している。
神奈川県のJAはだのは、冷却ファンの付いた空調服の導入を進めようと費用の半額を助成する制度を設けている。組合員とその家族が対象で上限は3万円。22年度以来、185人が利用し「着心地がいい」と好評で、JAが率先して農家の命を守っている。
気象災害は地震や雷、集中豪雨だけではない。農作業中の死亡事故では、農機事故に次いで多いのが熱中症だ。ただ、熱中症は気象情報などである程度の予測ができ、適切な対策を取ることで防ぐことができる。あなたや大切な人の命を守るために、無理のない作業を心がけよう。