[論説]低迷する食料自給率 国産シェア奪還を急げ
23年度のカロリーベース自給率は、小麦の収量や米の消費量が増えるなどプラス材料はあった。一方、テンサイの糖度が低下し、国産を原料とした製糖量が減ったことがマイナス材料となり、結果的に横ばいとなった。
一方、生産額ベースは61%で、過去最低だった前年度を3ポイント上回った。輸入総額が前年度より減ったことで上向いた。ただ、75%とする目標との開きは大きいままだ。
食料自給率は近年、低迷が続く。1965年度にはカロリーベースで73%あったが、99年度は40%まで減少。その後も横ばいで推移し、20年度に過去最低の37%に落ち込んだ。米国104%、フランス121%、ドイツ83%など、欧米の主要国と比べても日本の低さは際立っている。
オレンジ果汁の輸入が停滞し、今春にオレンジジュースが相次ぎ販売休止に追い込まれた。世界各地で紛争が続き、人口増や気候変動が加わり、食料を欲しい時に好きなだけ輸入することは難しくなった。だからこそ自給率の向上が重要だ。食料安全保障の強化へ、25年ぶりとなる食料・農業・農村基本法を改正したタイミングでもある。今こそ生産基盤を強化し、農業を大事にする政策へシフトしなければならない。
重要なのは、輸入依存から脱却し、国産シェアを伸ばすことだ。カロリーベースの品目別自給率を見ると大豆が26%、小麦が18%、畜産が17%と半分にも届かない水準だ。
改正基本法成立を受け、政府は来年3月、今後10年間の農業政策の方針を示す食料・農業・農村基本計画を改定する。改定に向けた議論の中で国産シェアをどう増やし、農業所得を増やすか、実効性ある対策を求めたい。
心配なのは、今夏スタートとしていた議論が、いまだに始まる気配がないことだ。岸田文雄首相の自民党総裁選不出馬で議論は新政権に委ねられ、開始が一層遅れる恐れもある。時間不足で消化不良に終わらぬよう、できる限り早く議論に着手すべきだ。
新基本計画では、新たな自給率目標を示す一方で、自給率とは別の複数の目標も設定する方針だ。自給率の目標や位置付けを安易に下げたり、不明瞭にしてはならない。あくまで重要なのは、国民が命をつなげる自給率の設定だ。意欲ある目標を掲げたい。