[論説]VS“最悪”外来雑草 分布を把握し元を断て
同雑草は、国内では1989年に兵庫県尼崎市で初めて発見された。水田や農業用水路、河川など日当たりの良い水辺に生息し、乾燥にも強く畦畔や農道でも生育できる。大きな特徴は、わずか数センチの茎や根でも簡単に再生する点。茎の断片が川や水路に流れ込むなどして、分布を拡大させている。
水辺を覆うように群落を作り、水路のポンプを詰まらせたり、田で繁茂してコンバインに絡まり作業を遅らせたりする。茎の断片が散らばってさらに分布を広げてしまうことを懸念し、水稲の収穫を断念した例もある。これまで茨城県以西の25都府県で発生が確認されていたが、8月には初めて福島県でも確認、稲作主産地の東北に侵入した。
対策として重要なのは、刈り払い機を使わないことだ。刃によって茎の断片が散らばり分布拡大を助長しかねない。その上で、田に侵入させない対策が求められる。農研機構などが公表した研究成果によると、有効だったのが水口へのネット設置だ。ネットだけでは破れやすいため、金属製のざるを組み合わせることを勧める。いずれも市販品を使えるので作りやすい。
田に侵入した場合は、まん延の防止が求められる。同機構などの研究では、有効成分ピラクロニルかフロルピラウキシフェンベンジルの入った剤が効くという。これらを成分に含み、同雑草に向く剤は、日本植物調節剤研究協会のホームページでも紹介している。畦畔は、DBN粒剤とグリホサートカリウム塩液剤を組み合わせて使うと有効だ。
群落になってしまうと薬剤が効きにくくなるため、早期の発見・防除が重要となる。
ただ、田や畦畔に侵入した同雑草の防除は“対症療法”でしかなく、元を断つ対策が課題だ。河川や水路に茎の断片が流れ込み、発生が広がるという水系を介した分布拡大をどう食い止めるか。河川周辺の除草に乗り出す県もある中で、同機構などは河川や水路での薬剤散布に関する試験を進めている。現状は生態系への影響が不明なことなどから、散布は認められていない。今後の研究に注目したい。
一方で病害虫と比べて雑草は、対策の検討やその前提となる発生状況の把握を担う国や県の専門人材、研究者が少なく、予算も不十分との指摘もある。こうした課題の解決も求めたい。