[論説]旺盛なサツマイモ人気 広がる需要 対応強化を
日本農業新聞が毎年実施している農畜産物トレンド調査で、流通・販売のプロに2024年の売れ筋青果物を聞いたところ、野菜はサツマイモが6年連続で1位となった。
ひと昔前までは、東の「ベニアズマ」、西の「高系」と品種が限られていたが、近年は「べにはるか」「シルクスイート」など甘くねっとり・しっとり系や、ほくほく系の「栗かぐや」といった品種が登場。西日本を中心に発生が確認され、北海道を含めて全国的な課題となっているサツマイモ基腐病に対する、初の抵抗性品種「べにひなた」も23年、育成された。さらにねっとり系で白い皮が特徴の「きみまろこ」など、官民挙げた品種開発が加速する。
火付け役となった「べにはるか」は、農研機構が開発し、10年に品種登録された。全国各地で安定生産できる栽培適性と甘くてねっとりした食味で、焼き芋やスイーツの需要を捉え、「作りやすく売りやすい」と評価が高く、種苗も導入しやすい。農水省によると「べにはるか」の作付面積は全国で6986ヘクタール(22年産概算値)。青果用の主力だった「高系14号」「ベニアズマ」を抜いて青果用品種1位となり、醸造用品種「コガネセンガン」も抜き、サツマイモ全体で1位となった。
19~23年の5年平均の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は1キロ266円と、14~18年比で3割高。近年はスーパーやコンビニも、焼き芋の取り扱いを拡大。高級スイーツ店や、焼き芋を飲み物として提供する飲食店・メーカーもあり、新たな提案が進む。こうした人気を一過性のブームで終わらせない、販路を明確にした産地形成が求められている。
課題は、品質にばらつきがあることだ。一部の市場関係者からは、「新しい産地ほど、ばらつきが見られる」と指摘する声がある。増産が見込まれる中、ブームが過ぎて価格が落ち込むことがないよう、個選、共選にかかわらず、生産者一人一人が、土づくりや貯蔵技術を重視し、品質を一定に保つ栽培に励むべきだ。
販売先の需要に対応することも重要だ。コンビニやスーパーでは店内での焼き芋販売が中心のため、小ぶりや細物を求める傾向がある。一方、干し芋やスイーツなどは歩留まりの良い太物へのニーズが高い。需要の多様化に合わせ販売先を設定し、持続可能な産地を目指そう。