そもそもお肉のタンパク質は、熱を加えて内部の温度が45~50℃ぐらいになると最も軟らかくなりますが、さらに熱を加えて70℃を超えてくるとだんだん硬くなってきます。本来ローストビーフはオーブンでじっくり焼き上げます。香ばしくて大変おいしいのですが、中心温度のコントロールがむずかしく、また表面に近い部分はどうしても硬くなってしまいます。
さて、食品衛生法で規定される食肉製品の分類の一つに「特定加熱食肉製品」というものがあります。その製造基準は肉塊の中心部を63℃瞬時またはこれと同等以上の加熱を行うとしています。「同等以上」とは、例えば55℃の場合は97分、60℃の場合は12分などとなっています。
この微妙な温度の加熱条件をクリアするために、市販されているローストビーフの多くは、新鮮な牛肉の肉塊に調味料をまぶし、表面に焼き目を付けて香ばしさを付与したうえで真空包装をし、60℃ぐらいのお湯で湯煎することで「低温調理」をして製造されています。低温調理器がある方は挑戦してみてはいかがですか?
公益社団法人全国食肉学校
専務理事学校長
小原和仁