[論説]JAの人材確保 多様な声生かす組織に
JA職員の採用・定着を巡る環境は厳しい。JA全中の調べでは、2023年度時点のJA職員数は約14万人と、18年度に比べて約1割減少している。また、新規採用者の実績も計画を下回る状況が続き、JAの人材難は深刻化している。
こうした情勢を受け、東京都内で先月開かれたJA経営・人づくり研究会では、人材難時代の多様性を生かしたJA経営がテーマとなった。この中で女性や若手、高齢のベテラン職員など、多様な人材を適材適所に配置する重要性が強調された。
JAみえきたは、女性管理職の積極的な登用について報告。女性職員の制服を役職別に3タイプ用意し、昇進へのモチベーション向上につなげるなどの工夫を重ねた結果、24年度の女性管理職は11人となり、15年度(1人)と比べて10人増えた。また、階層別にJAの在り方などの意見を交換することで、職員の意欲向上につなげている。
滋賀県のJA東びわこは、若手職員が新卒採用業務に参画したことで、JAへの入組を希望する学生の印象が良くなり、新卒採用の応募につながったと報告。職員減少による負担増を軽減するために業務内容を見直してデジタル化を進めることを提案し、役員が先頭に立って検討する必要があると訴えた。
18日に控える第30回JA全国大会組織協議案では、五つの戦略の一つ、経営基盤強化戦略の中で、協同組合らしい人づくりとして、一人一人の職員が「働きたい」と感じる職場づくりに取り組むことを盛り込んだ。新卒や中途採用、定年雇用のいずれの場合においても「JAで働きたい」と思える風通しの良い職場環境に改善する必要がある。「JAで働いて良かった」と、自らの仕事に使命感を見いだせるかが問われている。
福岡県のJAむなかたの小島信昭組合長は、働きやすい環境をつくることが自分に与えられた仕事と考え、職場からの情報を基に、JAの施設改修や初任給引き上げなどに取り組んだ。その結果、職員自らが「JAは働きやすい」と周囲に就職を勧め、実際に入組した職員もいるという。
昭和のやり方を令和の世代に強要するのでは持続性は見込めない。誰もが働きやすい柔軟な組織に変わることが急務だ。多様性を尊重した職場づくりに取り組もう。