[論説]直売所の課題 持続可能な価格設定を
直売サミットは、JAの直売所や道の駅、インショップ形式で販売する農家グループなど多様な関係者が集う場となる。優良事例を共有する全体会の後に開く分科会では、直売所が直面する課題について話し合う。今回は、農業生産の振興や商品開発に加え、持続可能な値付けの在り方や直売所間の物流がテーマ。
直売所といえば安くて新鮮が代名詞だが、農家にとっては悩みの種でもある。関係者から課題として挙がるのは、「採算が取れないような安値を付ける出荷者がいて困る」という声だ。完売を最優先するあまり、出荷者が市場価格より大幅な安値を設定すれば、他の出荷者もその価格に引きずられ、持続可能な値付けにつながらないという。自身の人件費を安く見積もっていないか、考える必要がある。
採算を度外視した安値設定は、生産費上昇分の価格転嫁を実現する流れと逆行し、消費者は適正価格が分からなくなる恐れもある。この価格設定で次世代は営農を続けられるのか、値付けする出荷者に対し、店舗側から再検討を促してほしい。バックヤードに卸売市場の価格などを掲示するのも手だ。持続可能な農業、直売所の経営に向けて知恵を出し合おう。
農家の高齢化に加え、異常気象の頻発で、直売所の主役となる地場産野菜や果実の出荷が減っているのも大きな課題だ。客が来ても肝心の地場産がなく、チャンスロスが生じている。市場から仕入れて売り場を埋めていては、スーパーと変わりがない。直売所であるからには“産直一筋”を守り抜きたい。それをカバーする一つの手段が直売所間の連携だ。北日本のリンゴと暖地のミカンを相互に送り合う「補完型」は定番で、ご当地調味料なども一緒に販売して、売り場を盛り上げたい。
JA全農の通販サイト「JAタウン」では注文・決済機能を活用した、直売所間取引システムが稼働している。従来は店長同士の電話取引が多かったが、産地在庫が分かり機動的な仕入れができるのが強みだ。JA全農福島の直売所「愛情館」は昨年、同システムで大分県のカボスを取り寄せて販売した。大分側からJA関係者が駆け付け、みそ汁にカボスを搾って入れる地元独自の食べ方を紹介した。
JAグループの強みを生かし、持続可能な農業と直売所運営につなげよう。