オーストラリアでは部分肉流通がほとんどで、枝肉はそれを作るための一形態に過ぎないので、できるだけ部分肉製造がしやすい状態に仕上がっています。例えば、腎臓と腎周囲脂肪(ケンネン)はと畜段階で除去されていて、枝肉の冷却も容易になります。かた・ももなどの筋肉間と、椎体の棘突起にも同様にナイフが入っているので、後工程でのひと手間が省けます。
枝肉は冷却されて、と畜後24時間で分割・除骨されます。脂肪が冷え切っていると部分肉製造作業は大変ですが、この段階では枝肉は完全に冷えきっているわけではないので比較的楽に行うことができます。逆に、部分肉が真空包装されてから速やかに冷却するので、中心温度が0℃に達するのは日本より早いと思われます。
除骨作業においては、まな板の上で行うと大変な力仕事となりますが、「サイドボーニング」(吊るし捌き)をすると、重力を利用して比較的楽に作業をおこなうことができます。また、肋骨はプレート状にまとめて除骨し、後工程で肋間筋を除去するので、作業は早くなります。複雑な形をした椎体周囲部分の骨には、ある程度肉を残したまま除骨し、後工程でその残った肉を除去すると作業が早くなります(ただし挽材用原料が発生します)。
部分肉規格についてはAUS-MEAT(オズミート)が一元管理していて、自分勝手にいくらでも規格が作れるわけではないので、結果として規格数が際限なく増えるということもありません。
我が国でも参考になることがありそうですね。
公益社団法人全国食肉学校
専務理事学校長
小原和仁