[論説]止まらぬ書店の減少 地域文化の拠点守ろう
日本出版インフラセンターによると、2013年度に全国に1万5602店あった書店数は、23年度には1万918店と3割も減少。出版文化産業振興財団の調査によると今年3月時点で、書店がゼロの自治体は482市町村と、全市区町村の約3割に上る。
背景には、人口減少やネット通販の普及などがある。特に読書離れは顕著だ。文化庁が今年行った調査では、1カ月に読む本の数について「(1冊も)読まない」との回答は63%と過去最高になった。
家の光協会が1946年から2023年まで行った「全国農村読書調査」でも、読書をする人の割合はここ20年ほど減少傾向にあり、特に雑誌を読む人の割合は大きく低下している。
読書離れと書店の減少が進んでも、ネットメディアやネット通販の普及で、情報を得る環境は損なわれていないと思う人もいるかもしれない。文化庁の調査でも、読書量が減っている理由の最多は「情報機器(スマートフォン、パソコンなど)に時間が取られる」ためだった。
ただ、弊害もある。代表的なのが、それぞれのユーザーの検索や閲覧の履歴から、自動的に「おすすめ」の情報が表示される「フィルターバブル」の問題だ。無意識のうちに自分の好む情報だけに接するようになり、さまざまな考え方や違いを受け入れるのが難しくなり、「社会の分断につながっている」との指摘もある。ネットで本や雑誌を購入する場合も同様だ。
これが書店ならば、興味のない本や雑誌も目に入り、新たな出合いと発見がある。違う観点を持った著者の本もあり、多様な価値観に触れることで視野が広がり、他者との対話の糸口になるだろう。
地域の図書館にも期待したい。文部科学省は、図書館と書店の連携による読書推進や地域活性化を支援しようと、25年度予算の概算要求に関連経費を盛り込んだ。同省によると、連携の取り組みは既に始まっており、鳥取県立図書館は、図書・雑誌の9割以上を地元書店から購入。東京都の区立千代田図書館は、展示などを通して地元古書店街の魅力を伝えている。
JAも、書店との連携を模索してはどうか。食や農業に関する本を通して就農やJAに関心を持つ人が増えるかもしれない。書店を地域文化の拠点として守り育てよう。