特に注目されているのが、公的な施設や給食で有機農産物を使う「公共調達」。首長が宣言するということは、農業政策だけでなく教育、福祉とも連携し、市民のための地域づくりに有機を活用する施策が求められます。その代表が有機給食で、2022年度までにオーガニックビレッジのうち117市町村が取り組んでいます。
有機農業の日の12月8日に合わせて先ごろ、東京都港区にある区立小中一貫教育校赤坂学園では初の試みとして、全校児童・生徒730人に有機給食が提供されました。使われた有機食材は、千葉県木更津市のカブ24キロ、レンコン20キロ、サツマイモ23キロなどをはじめ、富山県南砺市のお米51キロ、宮崎県高鍋町のイチゴ16キロなど。学校では調達食材のリストを聞いてから、栄養士らが揚げ野菜や五目ご飯、カブのみそ汁などの献立を考えました。
5年生に向けた食育では、お米を提供した南砺市の「なべちゃん農場」の渡辺吉一さんが授業をしました。60歳までJAに勤めていたこと、耕作放棄されていた中山間地の田んぼを見てこの場所を守りたいと農家になったこと。人にも生き物にも優しい農法でホタルやカエルが増えた経験を語りました。本物の農家に会ったのは初めてという児童も多く、五目ご飯をおかわりする子もいました。
この取り組みを港区と共催したのは、有機関係者らでつくる「日本オーガニック会議」。有機産地の自治体と都市の学校などを結んで、公共調達の流れをつくり、双方の食料や環境問題解決に寄与する「オーガニックビレッジ・フレンズシティ構想」を提唱しています。
有機給食は割高だと思われがちですが、予算内で実現する例もあり、規格外が出にくいメリットもあります。産地と消費地が自治体同士で連携すれば、食の好循環が生まれ、産地は収入の安定に、市民には安心が担保されます。
深刻な課題は、都市の人が農業を知らないことです。慣行か有機か、ではなく、地域農業を伝えるきっかけに有機を活用するのがオーガニックビレッジだと捉えれば、これは消費者を味方につけるチャンスです。