[論説]プラごみの削減 置き換えから始めよう
国際会合での焦点は「プラ生産に制限をかけるかどうか」だった。小売業でのプラ包装を原則禁止するフランスなどの欧州連合(EU)、プラごみによる海洋汚染の影響を受けやすい島しょ国は、世界一律の削減目標の設定を求め、規制に積極的だった。
一方、中国をはじめ原油国などは生産制限に強く反発。日本は一律の生産制限でなく、各国の状況に合わせて削減を進めるよう提案した。条約案は、規制に踏み込んだ記述がないにもかかわらず、「作業完了に程遠い」として合意には至らなかった。
経済協力開発機構(OECD)によると、2019年の世界のプラ廃棄量は20年前と比べて倍増。廃棄されたプラごみが海洋汚染の他、製造・焼却時に出る二酸化炭素(CO2)の増加による地球温暖化など、さまざまな環境問題を引き起こすことは各種調査から明らかだ。
求められるのは、リサイクルだけでなく「なるべく使わない」という発想の転換だ。資源ごみの回収日、ごみ集積場にはペットボトルや食品などの空き容器が山のように積まれている。化石燃料の代替として燃やしたり、膨大なコストとエネルギーをかけて再生したりするのは、環境への配慮が足りない。
脱プラへ、ペットボトルではなく「水筒にお茶」を入れてはどうだろう。会議時も配るのをやめ、案内文書に「水筒持参」を呼びかけるのも手だ。ペットボトルから紙容器や水筒にするなど包装を見直し、できるだけ自分で茶を入れる習慣に立ち戻りたい。
工夫次第でできるはずだ。20年のレジ袋有料化でエコバッグが定着した。“もらうのが普通”だったレジ袋は有料化が響き、断る人も多くなった。環境省のアンケートでは業態によって差はあるものの、8割前後の人が辞退した。
青果物の出荷・販売も、選別から袋詰め、バーコード付きのシール貼り――と生産側、小売り側ともに、かなりの負荷がかかっている。
例えば、直売所などでは規格を簡素化し、袋詰めをやめてコンテナや麻袋などに入れて、欲しい量だけ買える「量り売り」を本格的に進めてはどうか。食品ロスの削減につながり、業務の省力化で生まれた時間と労力は、栽培管理や集客に向けた店づくりなどに充てることができる。事業体には、助成金などの優遇措置を設けて推進したい。