[論説]2024年回顧・営農 弱る経営基盤に対策を
1月は能登半島地震で始まり、さらに異常気象が農業を襲った。資材価格は高止まりし、米不足が発生。営農に大きく関わる改正食料・農業・農村基本法も施行された。年末には、水田活用の直接支払交付金の見直しを巡る質疑が国会で焦点になった。
能登半島の地震や豪雨などの自然災害は、離農を促す方向に働いた。高齢者などの小規模層を中心に中山間地での営農が断念された。苦境に立たされたのは小規模だけではない。後継者のために借金をして規模を拡大した大規模層も、経営が悪化。資材高騰が長期化し、見込んだ利益を得られないためだ。後継者がいて、本来なら将来も残るべき経営体も経営危機に直面した。人手不足も経営継続の障壁になった。特に農村では雇用確保が難航した。
農政の憲法ともいえる食料・農業・農村基本法は1999年に施行されたが、以来、農業総産出額も基幹的農業従事者数も減少。四半世紀ぶりの改正は、農業の持続的な発展や環境との調和を基本理念に置いた。経営基盤を強化し農業の弱体化に、いかに歯止めをかけるかが課題となる。
農業の持続的な発展を支える生産性の向上策として、改正法ではスマート技術に力点を置く。だが、スマート農業の中心となる情報通信技術(ICT)は、当初の導入費用が大きい。定期的なシステム更新は、追加費用が発生する場合もある。これを念頭に置きたい。環境への負荷をかけない農法は、生産性との両立が難しく、今後の導入の足かせとなる可能性もある。
人、モノ、カネは経営資源の柱だが、今年は柱の揺らぎが著しかった。人手不足と高齢化対策に、機械化は一つの手ではあるが、施設・資材の「モノ」が高騰し「人」を代替する機器の導入は厳しい。「カネ」の自己資本比率や借入金限度額を、経営環境に合わせ見直す必要がある。
今年は、大豆の有機栽培体系、超音波を利用した害虫防除、農業に特化した生成AI(人工知能)の開発など、環境負荷の低減や省力・低コスト化につながる技術開発が相次いだ。農業の継続へ、どう現場で実装させるかが鍵だ。
経営者だけでなく、経営を支えるJAや普及センターなども、経営環境が激変していることを念頭に置き、農業基盤の強化と持続的な農村に向けて知恵を絞りたい。