[論説]2024年回顧・災害 農業維持へ備え万全に
地震への不安と緊張が高まった1年だった。石川県能登地方を震源とした最大震度7の能登半島地震が発生して明日で1年。死者は関連死と合わせ500人を超え、家屋の倒壊や、生活インフラの壊滅など多大な被害も生じた。
8月8日には、宮崎県で最大震度6弱の日向灘地震が発生。気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を初めて発表し、15日まで警戒を呼びかけた。同地震が実際に起きれば、被害は東日本大震災の10倍以上と想定されている。臨時情報の発表を受け、多くの人が米の備蓄に動いたことで、スーパーの店頭から米がなくなる「令和の米騒動」につながった。災害はいつ起こるか分からない。日頃から米など食料品の回転備蓄を進め、避難場所や経路の確認などをしておこう。
甚大な水害も多発した。7月は秋田、山形両県を中心に記録的な豪雨となり、記録的短時間大雨情報が両県で計5回出された。山形では線状降水帯が2回、大雨特別警報が2回発表された。農林水産関連の被害額は両県で約458億円に上った。
9月には、地震から復旧途上の能登を記録的豪雨が襲った。1時間降水量や3時間降水量は観測史上1位を更新。輪島の総雨量は500ミリを超え、平均2カ月分の雨が2日間で降った。約950ヘクタールの農地が冠水し、土砂災害も発生した。
災害が頻発する中、多くの農家が再建に苦しんでいる。災害のたびに心身が疲弊し、離農が相次げば、過疎化は進み、石破政権が力を注ぐ地方は創生しない。食料安全保障も確保できない。被災農家が復旧に向けて希望を抱ける万全な支援策が求められる。
線状降水帯の多発に伴う豪雨災害の増加は、地球温暖化の影響が大きい。気象庁気象研究所は能登豪雨について、「温暖化がなかった場合と比べて総雨量が15%増加した」と分析する。地球規模で海水温の上昇、都市部の拡大、森林の減少などが進み、線状降水帯の多発につながっている。引き金を引いているのが、私たちの経済活動だ。
対策は待ったなしである。二酸化炭素(CO2)の排出抑制と適応策が急務となる。環境と調和した農業の維持拡大や水害を防ぐ田んぼダムの設置など、農地を活用した取り組みを広げ、地域ぐるみで災害を防ごう。