[論説]真価問われるJA 課題克服へ対話と実践
「協同活動と総合事業で食と農を支え、豊かなくらしと活力ある地域社会を実現する」。昨秋の全国大会決議でJAグループの存在意義をこう発信した。農業・農村が岐路に立つ中、組合員・地域との対話を原点に、地域に根差すJAの存在意義の発揮に向け、五つの戦略を掲げた。
その一つが食料安全保障を支える食料・農業戦略だ。2025年度は、改正食料・農業・農村基本法に基づく新たな基本計画の初年度となる。農業経営体数は30年、20年と比べて半減し、耕作面積も大幅に減る見通しだ。厳しい農業農村の未来にJAはどう立ち向かうか。大きな使命だ。
経営体を確保するには新規就農や第三者継承などは欠かせず、地域の特性や組合員の声を生かした計画と具体策が求められる。農地利用の実情や市場動向の把握、営農・経営指導など、多様な情報とノウハウを持つのがJAの強みだ。10年後の農地利用の目標を定める「地域計画」の策定も3月末に迫り、農業・農村の将来像を描く重要な年となる。
JAの組織・経営基盤の強化も大会決議の柱だ。信用、共済を中心に事業環境は厳しさを増す。基盤の強化へJA合併も進むが、合併による広域化で、組合員との関係の希薄化を懸念する声は多い。
全国大会後は、各地域での農業の振興や組織・経営基盤の強化に向けた計画策定の大事な局面だ。ただ、組合員が“自分ごと”として考えられる計画にしなければ、絵に描いた餅で終わる。女性や若者など多様な声に耳を傾け、JA運営に生かすことが欠かせない。地域住民にJAをもっと身近に感じてもらうための情報発信の重要性は増している。広報力を高め、組合員・地域住民の参画を促し、JAの足腰を強くしたい。
組織基盤を支える職員の確保も急務となる。人口減少が加速する中、JAグループで共通する難題だ。組織自らが変わろう、変えようとする力にあふれているか。若い世代は注目している。JAの使命を問い直し、多様性を生かした変革に挑もう。
生産性向上や効率化を支えるデジタル化も加速する。柔軟な働き方を後押しするには女性の積極的な登用が欠かせない。JAで働くことは命と食、農を支えること――。協同の原点に立ち返り、組合員・地域の活力につなげよう。