[論説]農畜産物トレンド調査 業界挙げて適正価格を
調査は今年で18回目。対象はスーパーや生協、外食、卸売業者などの販売担当者で、野菜、果実、米、食肉、牛乳・乳製品、花きの6部門について計228社・団体から回答を得た。各社が重視する販売キーワードから、国内の農業や流通業界を巡る課題とヒントがうかがえる。
「適正価格(値上げ・コスト転嫁)」は2年ぶり1位となった。農家、流通業者ともにコストを適正に販売価格に転嫁しなければ、経営が厳しいことが浮き彫りとなった。
一方、消費者の家計も苦しい。節約志向の高まりを受けて「値頃感」は前年同様、5位となった。結果を分析した流通経済研究所の折笠俊輔氏は「農家の高齢化や資材高騰、気候変動など農業を巡る危機的な状況を消費者と共有し、それでも生産性を向上しようと努力する産地の姿を発信することが鍵になる」と指摘する。農畜産物の安定生産・供給には、一定のコストがかかることを消費者に理解してもらう必要がある。
2位は「安定供給」、4位は「気象」となった。昨夏は猛暑が長期化し、米や青果物の需給バランスが大きく崩れた。その状況は現在も続き、安定供給は引き続き、大きな課題となる。農水省によると、30年には、農業経営体が20年と比べて半減し、耕作面積も4割減となると試算する。食料供給の不安定化が見込まれるだけに、対策は急務だ。
「物流2024年問題」を受けて、昨年1位だった「物流」は3位となり、輸送力不足の解消が課題となる。
ただ、課題が多い時代だからこそチャンスもある。販路拡大のキーワードは「外国人需要(輸出・インバウンド)」(6位)、「持続可能性(環境配慮・エシカル消費)」(7位)だ。24年1~11月の訪日外客数は約3300万人に達し、過去最多だった19年1年間の約3200万人を突破、24年1~9月の訪日外国人の旅行消費額は約5・8兆円と過去最高の23年を上回った。こうした需要を取り込みたい。さらに環境を意識し、持続可能な農業と共に、量り売りをしたり、包装を脱プラスチックにしたりと流通形態の変革も求められている。
生産、流通、小売業者間でのつぶし合いや対決、対立の構図ではなく、農畜産物に共に携わる関係者として垣根を越えて協調し、食と農業の持続的発展を目指そう。