[論説]豪雪災害に警戒 命を守る行動 最優先に
気象庁などは、10日にかけて日本海側を中心に広い範囲で警報級の大雪・暴風雪となる恐れがあるとして注意を呼びかけた。車の立ち往生や、果樹の枝折れなど農作物にも影響が広がる恐れがある。青森では除雪が追い付かない地域もある。
注意が必要なのは除雪中の事故だ。青森県板柳町で4日、70代の農家男性が、小屋の雪下ろし作業をしていたが、その後、近くの用水路で上半身が水没した状態で発見された。家族が119番通報し、病院に搬送したが、死亡が確認された。同県では雪による事故で6人(9日現在)が亡くなり、昨冬の3人をすでに上回る。死傷者は98人に上り、うち9割以上(93人)が、屋根の雪下ろしなど除雪中の事故だった。
総務省消防庁によると雪下ろしや除雪作業中、落雪などによる死者は昨シーズンは22人で、うち65歳以上が20人と高齢者が多くを占めた。北海道が最多の9人、次いで新潟(8人)、青森(3人)、山形(1人)、福島(1人)と続く。負傷や軽傷を合わせ、405人が被害に遭った。温暖化の影響で世界各地では異常な高温や多雨、少雨などの極端現象が相次いでいる。今後も、豪雪や豪雨、少雨などの気象災害への備えと対策が求められる。
「越後雪かき道場」代表で長岡技術科学大学の上村靖司教授は、「最近の建物(母屋)は構造がしっかりしており、屋根の雪下ろしをする必要がない場合がある」という。ただ、母屋に比べて農機などを収納する小屋は構造がもろく、雪の重みで倒壊する危険性は高いと指摘する。
特に小屋には、命綱を固定するアンカーの設置がない場合が多く、事故につながりやすい。上村教授は「小屋よりも、自らの命を優先してほしい」と呼びかける。積雪時は不要不急の外出を控え、命を優先し「無理に除雪しない」という判断も必要だ。
課題は、屋根の雪下ろしには安全帯と命綱、アンカーが欠かせないが、あまり普及していないことだ。急いで導入を考えても、雪が積もっている時の設置は難しい。雪の中に土のう袋を埋め込んで踏み固め、仮設のアンカーをつくる方法もあるが、応急処置に過ぎず万全ではない。
事故は1月中旬から2月にかけて多発する。命を守る行動を最優先してほしい。