[論説]第三者継承の支援 地域連携し課題解決を
農家の高齢化が進む一方で、新規就農者は2023年は4万3460人と減り続ける。農業経営体の9割は個人で、後継ぎがなく廃業となれば耕作放棄地となりかねない。注目したいのが、第三者継承だ。昨年開かれた農業普及活動高度化全国研究大会の好事例を横展開したい。
家族以外の新規参入者が引き継ぐ第三者継承は、受け入れ側に懐疑的な風潮が強いだけに、どのようにこうした懸念を払拭するかが大きな鍵となる。富山県の富山農林振興センター管内ではブランド「呉羽梨」産地を維持するため、全ての農家を対象とした意向調査を通して実態を把握し、第三者継承のモデルを育成。成功例を可視化したことで現場の不安を取り除いた。農家、関係機関がブランド産地の危機に共通認識を持つことが重要となる。
産地が、個々の農家の離農のタイミングを把握するのは難しい。特に果樹農家の場合、廃園や規模縮小を考えて、収穫が終われば病害虫の発生源にならないよう、すぐ樹を伐採してしまう。そこで「呉羽梨」の産地は、収穫終了の前に次年度の生産意向調査を行い、伐採を未然に防ぎ、継承リストの作成につなげた。
結果、7年間で第三者継承によって産地外から10人の新規就農者が誕生。23年度からは同方式がモデルとなり、県内の全果樹産地を対象としたマッチングに発展した。就農希望者の選択肢を増やすためにも、県域など広い範囲での仲介支援が有効だ。
ただ、マッチングの後も課題がある。当事者同士が交渉すれば、財産評価で難航しやすい。このため福岡普及指導センターとふくおか県酪農協が連携し、酪農の第三者継承で調整に入った。特に土地や建物・機械、乳牛の財産評価は、実勢との相違があり双方が納得できる客観的な基準がない。ノウハウを積み上げることで、スムーズな継承支援につなげたい。
第三者継承は、産地外からの参入で産地に活気が生まれ、家族による継承が増えるなど相乗効果もある。
農水省も24年度の補正予算で、親元や第三者継承による49歳以下の新規就農者を対象に、受け継いだ施設や農機の修繕を支援する事業を新設した。第三者継承は持続可能な農業、地域の特産物や活力を維持する上で欠かせない。行政やJAは重要性を認識し、支援を強化すべきだ。