[論説]新成人の君たちへ 真の豊かさ見つけよう
18歳。同じ年齢でも、進む道はさまざまだろうね。進学や就職、実家の仕事に携わる人、起業したり、フリーで活動したりする人もいるかもしれない。
18歳の君たちの瞳に、今という時代はどう映っているのだろう。世界のあちこちで終わらない戦争、震災からの復旧・復興が進まない能登半島、なくならない虐待やいじめなどの暴力、ネットなどで繰り返される誹謗(ひぼう)中傷、貧困、気候変動で頻発する自然災害――。希望を感じるのが難しい環境に囲まれているんじゃないかな。
世界幸福度ランキング(2024年版)によると、143の国・地域で日本は51位。ランキングは、それぞれの国・地域の約1000人に「自分の人生にどれだけ満足しているか」と質問し、その回答に基づいている。日本は前年に比べて順位を四つ、落とした。自分の人生に幸福感を持てない人が増えていることがうかがえるね。
ただ、すぐに悲観しないで冷静に考えてみよう。日本は80年間、戦争をしていない国。戦争が始まりそうな、きなくさい気配はあるけどね。それでも、ノーベル平和賞を受賞した「日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)」など戦争を経験した人たちが、もう二度と悲惨な体験を繰り返してはならないと、次世代に平和の尊さを語りつないできた歴史があるから、何とか保たれているんだ。
戦争がなく、農家が丹精したおいしい農畜産物が食べられ、農作業によって生み出される美しい田園景観がある。それは、とても幸せで豊かな環境といえないかな。幸福感を得られないとしたら、生きづらい環境にあるってことかもしれない。誰かに「助けて」と言える勇気を持ちたい。
昨年の秋、発売された「人生ゲーム」の新商品は、お金ではなく「ウェルビーイング(幸福)」をポイント(ウェルポ)にしているよ。昭和時代の人生ゲームは、家族をつくり、大富豪になるのがゴールだった。令和版は、一人一人の価値観の変容を反映しているんだね。
価値観が多様化する時代、大事なことは、「違いを受け入れる柔軟性」だと思うよ。それと同時に「どうせ変わらないから」とすぐに諦めないことかな。大人の仲間として一緒に生き抜き、「幸福」を感じられる時代を創ろう。